一般的に「安定」のイメージが強い大企業。しかし変化の激しい現代において、当事者である社員たちは、自身の将来にどのような本音を抱いているのでしょうか。
こうした背景を踏まえ、ベンチャー・中小企業向けのHR総合支援サービスを行うProfessional Studio株式会社( https://professional-studio.co.jp/ )(本社:東京都中央区、代表:市川龍太郎)は、大企業におけるキャリアへの意識と転職に対する考え方の実態を探るため、主要都府県に在住する日系大手企業の正社員438名を対象に調査を実施しました。
本調査の結果、年収が高い層ほど将来不安を強く感じている一方で、実際のキャリアチェンジにおいては、年代による行動量の差と、挑戦を阻む多様な要因が明らかになりました。
【本調査における主な結果】
・年収1000万円以上の7割超が将来のキャリアに「不安あり」
・20代の約半数がベンチャー転職・独立に向けて「行動中」
・挑戦のハードル、「失敗リスク/年齢/ブランド喪失/スキル」が3割台で拮抗
※調査方法や対象者などの詳細については、後述の「調査の実施概要」をご覧ください。
主な調査結果
1.年収1000万円以上の71.1%が今後のキャリアに「不安あり」、高年収層でも将来に懸念
一般的に、大企業に勤め高い年収を得ているビジネスパーソンは、将来も安泰であるというイメージを持たれがちです。しかし、当事者たちは自身のこれからのキャリアをどのように捉えているのでしょうか。現在の年収別に、将来の仕事や働き方(昇進・ポスト・収入等)に対する不安の有無を集計しました。

「非常に不安を感じている」と「やや不安を感じている」を合わせた不安を感じている割合が最も高かったのは、年収400~600万円の層の77.1%でした。これに、年収600~800万円の層が73.3%、年収1000万円以上の層が71.1%で続いています。
最も年収の低い年収400万円未満の層の同割合は65.9%にとどまっており、年収が上昇することによって将来の不安が減るわけではないことがうかがえます。特に年収1000万円以上の層では「非常に不安を感じている」が33.8%と最も高く、一定の年収を超えるとむしろ不安の質が高まる側面もあるようです。
ビジネス環境の変化が激しい現代において、現在は好待遇であっても、その地位や収入を維持し続けることへの難しさや、自身の市場価値に対する危機感を、ハイクラス層ほど敏感に感じ取っている可能性があります。
【参考データ】ハイクラス層の不安の正体
高年収層であっても将来への不安を抱えていることが明らかになりましたが、具体的にどのような点を懸念しているのでしょうか。年収1000万円以上の回答者に焦点を当てて、その理由の内訳を確認しました。

最も多く挙げられた理由は「役職定年で給与が下がり、生活水準を維持できない懸念」で、38.4%に上りました。次いで「他社で通用するスキルがないと感じており、現職に残るしかない」が35.2%、「退職金・年金だけでは将来の生活設計が立たない」が28.6%と続いています。
現在の高い地位や収入は、「役職喪失後の生活維持への懸念」や「会社の外でも活躍できるかという不安」と表裏一体であることがうかがえます。ハイクラス層ほど、現在の生活水準を維持し続けることの難しさや、老後も含めた長期的な資金計画に対して、シビアな現実認識を持っているようです。
2.20代の46.0%がベンチャー転職・独立に向けて「行動中」、若手層の流動化が加速
将来への不安が色濃く残る中で、現状を変えるために具体的な行動を起こしている人はどのくらいいるのでしょうか。年代別に、ベンチャー転職や独立・起業といった新たなキャリアへの挑戦状況について集計しました。

結果は、20代においては「すでに取り組んでいる」が22.2%、「準備を始めている」が23.8%となり、合計46.0%が新たなキャリアに向けて実際に行動を起こしていることがわかりました。30代においても、合計36.1%が行動中と回答しています。
一方、40代では行動中の割合は25.7%、50代では8.0%となっており、年代が上がるにつれて行動を起こす人の割合は減少する傾向にあります。
20代の約半数、30代でも3人に1人以上が、ベンチャー企業への転職や独立といったキャリアの転換に向けて具体的に動いています。若手層を中心に人材の流動化が進んでおり、従来の企業にとどまることだけが唯一の選択肢ではなくなりつつある現状がうかがえます。世代によって、キャリア選択の行動量には明確な差があるといえそうです。
3.行動層の懸念は「失敗リスク/年齢/ブランド喪失/スキル」が3割台で拮抗、多様なハードルに直面
では、実際に新たなキャリアへ向けて動き出している人たちは、どのようなハードルを感じているのでしょうか。ベンチャー転職や独立に向けて「取り組んでいる/準備を始めている」と回答した人(行動層)を対象に、行動する上でのハードルになっている要因について聞きました。

最も回答が多かったのは「失敗した時のリスクが取れない(35.4%)」でした。これに「自身の年齢では採用されにくいと感じる(33.7%)」、「大企業の看板・ブランドを失うのが惜しい(33.0%)」、「大企業での経験が他社で通用するか不安(31.2%)」が続いており、4つの項目がいずれも3割台で拮抗する結果となりました。
特定のハードルだけが突出するのではなく、失敗リスクや年齢、現在の地位、さらには自身のスキルへの不安など、複数の課題が同じ重みでのしかかっている様子がうかがえます。行動を起こしている層は、こうした複合的なリスクや不安と向き合いながら、冷静かつ慎重にキャリアの選択肢を検討している状況にあるようです。
4.挑戦を諦めた最大の要因は「年齢の壁」で約半数、行動層とは異なる突出したハードルに
リスクや不安と向き合いながら行動する人がいる一方で、挑戦すること自体を断念してしまった人も存在します。「過去に関心を持ったことがあるが諦めた」と回答した人を対象に、諦める原因となったハードルについて聞きました。

諦めた理由として最も多かったのは「自身の年齢では採用されにくいと感じる」で49.8%と約半数を占め、他の理由を大きく引き離しました。次いで「失敗した時のリスクが取れない」が36.1%、「大企業での経験が他社で通用するか不安」が34.4%と続きます。
行動層では「失敗リスク」や「スキル」など複数の懸念が拮抗していたのに対し、断念層においては「年齢」という要因が突出している点が特徴的です。検討や行動をしている段階ではリスクや市場価値への不安など、様々な要素がハードルとなりますが、最終的に挑戦を断念する際には、年齢という現実的な制約が大きく影響する様子がうかがえます。
まとめ:不安の中で「いつ、どう動くか」が問われるキャリア環境
今回の調査からは、大企業で高い年収を得ているハイクラス層であっても将来への不安が残る一方で、上の年代になるほど新しいキャリアに向けた行動が抑えられるという構図が見えてきました。また、実際にベンチャー転職や独立といった新しいキャリアに関心を持った人も、最終的には年齢を理由に断念するケースが多いようです。
新しいキャリアに向けて動き出すに際しては、それぞれの人が置かれた立場や状況によって、さまざまなハードルに直面します。不安やリスク、自分のスキルや強みをどのように整理し、今後のキャリアの方向性を丁寧に考えてみることが、年収や年齢にかかわらず、自身にとって納得感のある選択をするための重要なステップになるでしょう。
調査の実施概要
調査機関 :自社調査
調査方法 :インターネット調査(株式会社ジャストシステム「Fastask」)
対象エリア:主要都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県)
対象者 :20歳~59歳の日系大手企業の正社員
調査期間 :2025年12月15日~22日
有効回答 :438名
※本リリースでは、労働力調査および事前スクリーニング結果から推計した「日系大手企業の正社員」の性年代別構成比に合わせて、ウェイトバック集計を行っています。

