物価高が続き、日々の暮らしや将来の見通しについて考え直す機会が増えています。こうした環境の中で、大企業で働く人たちは、自分の給与や働き方、今後のキャリアをどのように捉えているのでしょうか。
ベンチャー・中小企業向けのHR総合支援サービスを行うProfessional Studio株式会社( https://professional-studio.co.jp/ )(本社:東京都中央区、代表:市川龍太郎)は、物価高による大企業社員のキャリア観の変化を探るため、主要都府県に在住する日系大手企業の正社員438名を対象に調査を実施しました。
本調査の結果、昇給ペースに不満を抱いていない層ほど、ベンチャー・独立といった新たなキャリアへ向けた具体的な行動を起こしている傾向が見られました。
【本調査における主な結果】
・過半数が物価高に対して「昇給不足」を感じる一方、約7割が「プライベート時間は確保」
・ベンチャーや独立に向けた行動率、「昇給満足層」が「不満層」を大きく上回る
・仕事に「やりがいを感じる」層ほど、新しいキャリアに挑戦する傾向も
※調査方法や対象者などの詳細については、後述の「調査の実施概要」をご覧ください。
主な調査結果
1.物価高による「昇給力不足」を感じる大企業社員が過半数、55.3%に上る
物価上昇が続く中、給与の昇給ペースはどのように受け止められているのでしょうか。日系大手企業の正社員に対し、ここ数年の「給与の昇給ペース」に対する実感を質問しました。

結果は、「十分に足りていると感じる」が7.8%、「ある程度は足りていると感じる」が33.0%となり、合計で40.8%が昇給ペースに対してポジティブな回答でした。一方で、「やや足りていないと感じる」は28.4%、「全く足りていないと感じる」は26.9%で、合計で55.3%がネガティブな回答となっています。
大手企業の賃上げ率は高水準にあると言われていますが、個人の実感としては物価上昇のスピードに対して、昇給が十分に追いついていない状況にあるようです。
2.「プライベートな時間を確保できている」社員が69.0%、時間面では一定のゆとり
昇給ペースに不足感を持つ大企業社員が多い中で、日々の働き方についてはどのように感じているのでしょうか。続いて、現在のワークライフバランス(仕事とプライベートの時間のバランス)に関する質問を行いました。

結果は「十分に確保できている」は31.5%、「ある程度は確保できている」は37.5%となっており、合わせて69.0%がプライベートの時間を確保できていることがわかります。一方、「あまり取れていない」は16.8%、「ほとんど取れていない」は6.4%で、プライベートの時間を確保できていない層は23.2%にとどまっています。
大手企業では働き方改革が進み、残業規制や有給取得の奨励などを通じてワークライフバランスが向上している様子がうかがえます。給与面では不足感を感じる人が多い状況に対して、働き方においては過度な負担が減り、時間的なゆとりのある環境が整いつつあるようです。
3.「昇給に十分満足している」層の70.6%がベンチャー・独立に向けて行動中、不満層と大きな差
大企業社員の「昇給への不足感」と「働き方のゆとり」が見えてきましたが、新しいキャリアに挑戦しようと考えるのはどのような状況の人たちなのでしょうか。給与の昇給ペースに対する実感別に、ベンチャー転職や独立に向けた行動状況を比較しました。

昇給ペースが「十分に足りていると感じる」層では、ベンチャー・独立に向けて「すでに取り組んでいる」が40.9%、「準備を始めている」が29.7%となり、合計で70.6%が具体的に行動していることがわかりました。
このベンチャー・独立に向けた行動率は、昇給ペースが「ある程度足りていると感じる」層では44.1%、「やや足りていないと感じる」層では22.6%と大きく減少していきます。「全く足りていないと感じる」層では同割合が7.8%となり、「十分に足りている」層との間には約9倍という大きな開きが生じる結果となりました。
一般的に「現状への不満」が転職のきっかけになると考えられがちですが、今回の結果には、現在の昇給ペースに満足している層ほど、新たな挑戦へ踏み出す傾向が強く表れています。ベンチャー・独立に挑戦する人は、現状維持にとどまらず、次のステージを模索しようとする意欲的な人たちであることがうかがえます。
4.仕事に「やりがいを感じる」層ほどベンチャー・独立に積極的、「非常に感じる」層では64.2%が行動中
続いて、現在の仕事に対して持つ姿勢と、新しいキャリアに対する挑戦行動の関係について見ていきます。以下は、現在の仕事に対するやりがい・満足感の実感度別に、ベンチャー・独立への行動状況を集計したグラフです。

仕事のやりがいを「非常に感じている」層では、ベンチャー・独立に向けて「すでに取り組んでいる」が38.9%、「関心があり、準備を始めている」が25.3%となり、合計で64.2%が具体的に行動しているという結果となりました。
この行動率は、「やや感じている」層では40.7%、「あまり感じていない」層では9.7%、「全く感じていない」層では0%となっています。やりがいの実感度が高いほど、ベンチャー・独立への行動率も顕著に高くなる結果となりました。
昇給ペースへの満足度に続き、仕事へのやりがいにおいても、現状に満足している層ほど挑戦に積極的であることが確認されました。「今の仕事がつまらないから辞める」といった消極的な動機ではなく、現在の仕事に強いやりがいを感じながらも、さらに熱量を注げる環境を求めて動くという、極めてポジティブなキャリア選択の考え方がうかがえます。
◆【参考データ】ベンチャー・独立の「行動層」の特徴
ベンチャー・独立に向けた行動層(「取り組んでいる/準備を始めている」と回答した人)の特徴を確認するため、無関心層(関心を持ったことがない)と「仕事のやりがい・満足感」の実感度を比較しました。

現在の仕事にやりがいを「非常に感じている」または「やや感じている」と回答した割合は、無関心層の36.8%に対し、行動層では91.5%と高い水準となりました。現在の仕事に前向きに取り組み、自らやりがいを見出しているような人材が、次の挑戦へと具体的に動き出している姿がうかがえます。
まとめ:物価高の中で見えた、満足と挑戦が両立するキャリアの考え方
今回の調査を通じて、物価高による昇給不安がありながらも、多くの大企業社員が働き方のゆとりや仕事のやりがいを見いだしている様子が見えてきました。その中でも、昇給や現在の役割に満足している人ほど、ベンチャー・独立へ向けた行動を起こしている傾向が見られ、前向きな姿勢こそが新しい挑戦につながる側面があるようです。
こうした結果は、変化の激しい時代において、キャリアの選び方に新たな選択肢が生まれつつあることを示唆しています。不満の有無だけでなく、現在感じているやりがいや成長実感も踏まえて「今の環境で深めること」と「次で試したいこと」を整理することが、納得感のあるキャリアを選ぶためのヒントになるはずです。
調査の実施概要
調査機関 :自社調査
調査方法 :インターネット調査(株式会社ジャストシステム「Fastask」)
対象エリア:主要都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県)
対象者 :20歳~59歳の日系大手企業の正社員
調査期間 :2025年12月15日~22日
有効回答 :438名
※本リリースでは、労働力調査および事前スクリーニング結果から推計した「日系大手企業の正社員」の性年代別構成比に合わせて、ウェイトバック集計を行っています。

