「よりチャレンジングでやりがいのある仕事をしたい」「もっとダイレクトにスキルアップ・キャリアアップにつながる仕事をしたい」と考えているなら、選択肢としてスタートアップ企業への転職があります。しかしスタートアップ企業での働き方や待遇、求められるスキル、大手企業との違いなどがいまいちピンとこなくて、最初の一歩がなかなか踏み出しにくいのはよくあることです。
そこでこの記事ではスタートアップ企業について、メリット・デメリット、スタートアップ企業の探し方、選考の流れ、転職を成功させるコツまで解説します。
そもそもスタートアップ企業とは?どんな人に向いている?
まずは「スタートアップ」とはどのような企業なのか、そしてどのような人がスタートアップで働くのに向いているか、などの基本的な特徴を押さえましょう。
スタートアップ企業とは?ベンチャー企業との違い
じつは「スタートアップ」には明確な定義がありませんが、経済産業省の資料のなかでは以下のように定義されています。
- 新しい技術の活用、斬新なサービスなど新規性がある
- 加速度的に事業を拡大することを目指す
- 創業から間もない、比較的に創業年数の若い企業
引用:「行政と連携実績のあるスタートアップ100選」(経済産業省)
この定義に基づいてひと言でまとめるなら、「新規性のある事業や技術をもちいて急成長を目指す、創業から間もない企業」をスタートアップと呼ぶということになるでしょう。
新しいビジネスモデルや新しい市場を開拓することによって、社会全体に新しい価値を提供し、短期間での株式上場(IPO)や事業売却(M&A)を目指すのが特徴的です。
ただし実際には、“創業から間もない企業”であれば一律に「スタートアップ」と呼ぶことも多いです。
「ベンチャー」もまた、独自の技術やサービスを生み出す小規模企業を指す言葉ですが、「スタートアップ」と同様に明確な定義はありません。
しかし比較して語られるときには「スタートアップは新しい価値の創出やイノベーション自体により価値を置いている」「スタートアップのほうが出口戦略(IPOやM&A)を強く意識している」などの点が違いとして挙げられます。
参考:地方創生に向けたスタートアップエコシステム整備促進に関する調査事業報告書|経済産業省中国経済産業局
スタートアップ企業に向いている人の特徴は?
一般的にスタートアップ企業に向いているとされる人の特徴を以下に挙げます。
- 成長意欲が高い人
- 好奇心が強い人
- タフで実行力のある人
- 当事者意識の強い人
- 幅広い業務に携わりたい人
- 事業の安定性よりも新規性に惹かれる人
- つねに変化するカオスな状況を楽しめる人
- 既存の枠にとらわれない柔軟な人
- 課題解決から逆算して考えられる人
スタートアップで働く大きなメリットのひとつは、スピード感をもって様々な業務に取り組めることです。裏を返せば、そういう姿勢が求められるとも言えます。
短期的に事業を成功に導くためには、あらゆる課題に当事者意識をもって自分からのめり込んでいくことが重要です。成長意欲や好奇心が強い人にとっては、厳しくもやりがいのある仕事と言えるのではないでしょうか。
人手不足の状態が続くこともあるので、必然的に様々な役割や業務内容を担うことになります。ハードワークがつきものですが、幅広い業務に携わっていきたい人にとっては、ビジネススキルを急速に上げるための最適な環境とも言えるかもしれません。
スタートアップでは新しいビジネスモデルやサービスを作っていくため、柔軟な思考や課題解決が得意な人であれば、その能力を最大限に活かして働けるでしょう。
スタートアップ企業に向いていない人の特徴は?
一般的に、スタートアップに向いていないとされる特徴を紹介します。転職を検討する際、自分の価値観と照らし合わせてみてください。
- 安定した環境で働きたい人
- 充実した福利厚生を求める人
- 特定のスキルだけを極めたい人
- 決められた業務を遂行するほうが性に合う人
- ワークライフバランスを重視したい人
- やりがいよりも給与や待遇を重視したい人
とくに創業間もないスタートアップは、大企業と比べると、給与や福利厚生などの待遇は整っていないことが多いです。
またスタートアップでは様々な業務内容や役割に携われる反面、誰かに決められた仕事を割り振ってもらったり、1つのスキルだけを磨いたりするのには向いていません。
そのため「やりがいやスキルアップよりも、給与やライフスタイルを大事にしたい」という人にとっては、あまりマッチする環境とは言えないでしょう。
30代や40代でもスタートアップ企業への転職はできる?
年齢が30~40代以上の場合、社員の平均年齢が低いイメージから、なんとなくスタートアップやベンチャーへの転職にハードルの高さを感じるのではないでしょうか。
しかしスタートアップやベンチャーでは、年齢層がマッチするかどうかよりも、企業のビジョンやカルチャーに共感し、熱意をもって事業を推進できるかどうかが重要視されることが多いです。
スタートアップやベンチャーでは人材不足も起こりやすいため、転職するときに候補者の年齢そのものがネックになる可能性は低いと言えます。
もしも今の環境での自己成長に限界を感じていたり、よりやりがいのある仕事に取り組みたいと感じていたりするなら、スタートアップへの転職は30~40代の方にとっても選択肢として一考に値するでしょう。
スタートアップ企業に転職するメリット・魅力
スタートアップに転職するメリット・魅力としては以下のような点が挙げられます。
- 新しい事業モデル・価値観を生み出すことができる
- 裁量権・責任あるポジションにチャレンジしやすい
- 幅広い業務に携わることができる
- 成果を出すことが昇進・昇給につながりやすい
- スキルアップ・実績作りにつなげることができる
- 経営陣の動きや考え方を間近で見ることができる
- ストックオプションを付与される可能性がある
一般的なイメージではデメリットやリスクのほうが言及されがちですが、上記のように、スタートアップならではのメリットや魅力があるのです。
それぞれについて詳しく紹介します。
新しい事業モデル・価値観を生み出すことができる
スタートアップは、社会に新しい価値を創出することに重きを置いています。
新しいビジネスモデルや新しいサービスによって、新しい市場を開拓していく。もちろん困難な道のりですが、描いたビジョンを実現するために行動していくのはとても魅力的です。
将来性がある市場やサービスの第一線に立って、事業を牽引していくことができるかもしれません。実際にサービスを普及させることができれば、その実感ややりがいを得やすく、キャリアにおいても有益な経験となるでしょう。
裁量権・責任あるポジションにチャレンジしやすい
スタートアップは個人の裁量権が大きく、責任あるポジションにチャレンジしやすいのも特徴です。
とくに年齢が若いうちは、大手企業だとマネージャーやチームリーダーとして経験を積みたいと思っても、なかなか任せてもらいづらいでしょう。
スタートアップの場合は人材不足になりやすいだけでなく、成果主義の性格が強い傾向にあるため、スキルや経験、実績に応じてポジションを決定することが多いです。
そのため年齢にかかわらず、若い方でも裁量権や責任の大きな仕事を任される可能性が十分にあると言えます。
創業間もない場合、そもそもポジションがほとんど埋まっていないケースも。順調に成果を出しつづけ、事業も拡大していくと、若くして経営陣や役員の1人として抜擢されることもあり得ます。
スタートアップの創業期にコアメンバーとして働き、事業や企業の舵取りをすることは、キャリアを考えるうえでも貴重な経験となるでしょう。
幅広い業務に携わることができる
スタートアップは少数精鋭の組織であることが多く、そのぶん1人あたりが受け持つ業務の幅が広いです。
たとえばマーケティング業務や広告運用から営業までを1人で担当したり、人事業務をしながらその他のコーポレート業務も兼任したり、といったように事業や組織にかかわる幅広い業務を任せてもらえます。
今後の転職やキャリア形成においても、幅広い業務内容を経験できるのはよい財産となるとなるでしょう。
とくに将来的に起業したいと考えている場合、事業や経営を進めるにあたって必要なことをひと通り経験することで、よいデモンストレーションになるかもしれません。
成果を出すことが昇進・昇給につながりやすい
成果を出すことができれば昇進・昇給につながりやすいのも、スタートアップの魅力です。
一般的な企業では年功序列によって昇進・昇給するのがベーシックと言えます。しかしスタートアップの場合は少人数、かつ1人あたりの業務の幅や責任も大きいので、成果次第では短期間での昇進・昇給も可能です。
成果主義・実力主義の方にとっては、自分でどんどん成果を上げていくことが給与や昇進という目に見えやすい形であらわれることがとても魅力的に感じられるのではないでしょうか。
スキルアップ・実績作りにつなげることができる
スタートアップでは幅広い業務にくわえ、成果を上げることが求められます。
ハードルは高いかもしれませんが、それを乗り越えていくことができれば、一般企業で働くよりも速いスピード感で自己成長やスキルアップにつなげることができるでしょう。
成果がついてくれば、それは実績になります。責任の大きな仕事を任せられるからこそ、のちにそれが大きな実績となるのです。
スキルアップや実績作りができれば、自身の市場価値が高まることにつながるため、今後の転職やキャリアを考えるうえでも有益と言えます。
経営陣の動きや考え方を間近で見ることができる
少数精鋭のスタートアップではおのずとCEOやCOO、役員幹部と直接かかわる機会も多くなります。そのため経営に必要な動き方や考え方を、間近で見て学ぶことができるのがメリットです。
大人数の組織だと、自身の上長やマネージャーとかかわる機会はあっても、社長や経営陣とかかわる機会はそこまで多くないでしょう。
ポジションや業務内容によっては、自分の意見が経営方針に影響を与える可能性もあります。将来的に起業家や経営者を見据えている方にとっては、経営を学ぶためにこれ以上ない場と言えるのではないでしょうか。
ストックオプションを付与される可能性がある
スタートアップやベンチャーで役員や従業員になると、ストックオプションを付与される可能性があります。
ストックオプションとは、自社株を特定の金額で購入する権利のことです。上場したあとに市場価格が値上がりすると、自分が購入した金額と売却した金額との差分を利益(キャピタルゲイン)として得ることができます。
【具体例】
- 入社と同時に自社株を100円で購入する権利を10,000株分付与される
- 株式公開後に市場価格が2,000円となった時点で株を売却する
- 1株あたり1,900円の差分なので、10,000株で1,900万円の利益が得られる
上記はあくまで仕組みを分かりやすく単純化した例です。実際には株式の譲渡益は課税対象となるため、金額はあくまで参考までにとらえてください。
とくに外資系の大手企業からスタートアップへ転職すると、年収が下がったり十分な福利厚生が用意されていなかったりします。しかし上場することができれば、それを上回る利益を得られる可能性があるのです。
役員や経営陣だけでなく、従業員にもストックオプションが付与されるケースが多く、仕事をするうえでのモチベーションのひとつとも言えます。
スタートアップ企業に転職するデメリット・リスク
スタートアップに転職するときのデメリットやリスクは、いずれもメリットと表裏一体ではありますが、おもに以下のようなものが挙げられます。
- 基本的にハードワークとなることが多い
- 責任が求められる
- 年収が下がる可能性がある
- 福利厚生が充実していない可能性がある
- 事業撤退や倒産のリスクがある
これらについて詳しく解説していきます。先に紹介したメリット・魅力や、自身のキャリアプランと照らし合わせながら転職を検討していきましょう。
基本的にハードワークとなることが多い
スタートアップでは幅広い業務に携われる反面、基本的にはハードワークとなることはデメリットとも言えます。
メンバーが少ないことも1つの要因ですが、幅広い業務を担当することにより、必然的に業務量そのものが増えるためです。
帰宅してから過ごす時間や休日のあいだでも、脳内では仕事のことを考えていたり、実際に手を動かすことが必要となったりすることも、企業によっては発生するでしょう。
そのため仕事と私生活とをきっちり分けてバランスを取りたいという方にとっては、スタートアップに転職することはストレスにつながるかもしれません。
責任が求められる
スタートアップでは基本的に個人の裁量権が大きいというのは魅力的である一方で、責任の重さが負担になってしまうことが考えられます。
裁量権が大きいことは「どこからどこまでの範囲を個人で意思決定する権利があるか」と言い換えられますが、それは「適当に決めてもらって構わない」という意味ではありません。
あくまで最速で成果を出すための意思決定をすべきであり、そのために裁量権が与えられるのです。つまり1つ1つの意思決定には、ある程度以上の責任が問われます。
もちろんスタートアップに限らず、どんな仕事においても責任をもってやり抜くことは大事です。しかしスタートアップの場合は少人数ということもあり、自分自身の意思決定が事業に与える影響が大きいため、より責任が重いと感じられるかもしれません。
プレッシャーがかかっている状態では実力が発揮しづらいと感じたり、特定の業務に集中できなくなってしまったりする場合は、スタートアップの環境はあまり向いていない可能性があります。
年収が下がる可能性がある
事業が大きく成長する前段階にあるスタートアップの場合、経歴やスキルを鑑みて給与を決めるとしても、一般企業や大手企業などと比較すると給与が安い可能性があります。
優秀な人材を採用するために給与水準を高く設定している場合もあるので一概には言えませんが、とくに大手企業のミドルクラスやハイクラスの役職からスタートアップに転職すると、年収が下がってしまうケースもあるでしょう。
短期的に見れば年収が下がるのはデメリットです。しかし事業が成長してきた段階や、上場・M&AなどEXITを達成したときには、それを上回る給与や利益を得ることができるかもしれません。
そもそも給与や待遇をもとめてスタートアップに転職することはあまりおすすめできませんが、ライフプランやキャリアプランを長期的な目線で考えながら転職を検討してみましょう。
福利厚生が充実していない可能性がある
大手企業や一般企業と比べると、スタートアップの福利厚生は充実していない可能性が高いです。
まだ成長段階にあるスタートアップでは制度が整っていないことが多く、出産や育児に対応する休暇、家賃補助、資格取得の援助などの福利厚生には期待しないほうがよいでしょう。
メリットの面で挙げたように、昇進・昇給しやすかったり、上場後にストックオプションで大きな利益を得ることができたりする反面、事業が拡大するまでは基本的には福利厚生が充実していないものと考えておくべきです。
むしろ企業の成長に応じて、自身が福利厚生の制度立ち上げにかかわる機会があるかもしれません。
ただし事業が軌道に乗り始めた企業や、本格的に上場を目指すフェーズに入っている企業の場合は、福利厚生も充実しはじめている可能性があります。
スタートアップやベンチャーの福利厚生には、自社製品やサービスに関連するユニークな制度が多いのが特徴。
たとえばデザイン系の事業であれば美術館鑑賞補助が与えられたり、エンタメ系の事業であれば映画鑑賞補助や漫画購入補助が与えられたりといった例もあります。
事業撤退や倒産のリスクがある
理想通りに事業が成長しなかった場合、事業撤退やサービスの転換、倒産などのリスクがあります。
いくつも事業を手掛けている企業や子会社を有する企業であれば、部署転向などの選択肢もあるでしょう。しかしスタートアップの場合はそうもいきません。
事業やサービスがうまくPMF(プロダクトマーケットフィット)しなかったり、資金調達が難航したりと、新しい価値や新しい市場を開拓するためには高い壁がいくつも立ちはだかります。
もしものときには一時的に仕事がなくなってしまうため、大きなリスクと言わざるを得ません。
スタートアップへの転職を考えるときにはこういったリスクも視野に入れつつ、企業の資金調達状況や市場・サービスの将来性を分析しておくことも大切です。
スタートアップ企業の探し方
日本のスタートアップは近年拡大している傾向にありますが、一般企業と比べると数は多くありません。
とくにシード期(構想段階・創業前後)からアーリー期(事業化段階)にかけては、求人情報を探すのもひと苦労です。
スタートアップの転職先を探すときには、以下のような手段があります。
- スタートアップ業界に精通している転職エージェントを利用する
- 業界に精通しているVCや知人から情報収集する
- 転職サイトを利用する
- SNSやニュースサイトなどを利用する
とくにおすすめなのは、スタートアップ業界に特化した転職エージェントを利用する方法です。
おもに上場企業をはじめとする大手企業であれば、IR(Invester Relations)やコーポレートサイトなどの情報から経営方針や財務状況などが把握できて、企業について理解を深めることができます。
しかしスタートアップの場合は情報源が限られるため、スタートアップ業界に深く根を張っている専門エージェントを通すことで、よりマッチ度の高い企業を探すことにつながるのです。
スタートアップ業界に精通している転職エージェントを利用する
前述したように、スタートアップはそもそも数が少なく、求人情報や経営状態を確認するのが難しい傾向があります。ブログや採用ページなどで企業側が情報発信している場合でも、働き手目線での実態がつかみにくいのもよくあるケースです。
そのためスタートアップに転職するときには、転職エージェントのなかでもとくにスタートアップに特化した企業情報を扱っているエージェントに話を聞いてみることをおすすめします。
たとえばスタートアップのなかでも、創業メンバーとして参画したり、幅広く事業全体を見ながら何でも屋さんのように仕事をしてみたかったりする場合は、シード期からアーリー期の企業がマッチするでしょう。
ある程度地盤が固まった組織のなかで裁量をもって働きたい、事業をIPOさせるために尽力したい、と考えているのであればシリーズA以降のミドル期・レイター期の企業の方がマッチするかもしれません。
こういった視点も持ち合わせつつ、自分にマッチする企業を精度高く選定・提案してもらうことができるので、とくにスタートアップに初めて足を踏み入れていく方にとっては、エージェントが強い味方になってくれるでしょう。
Professional Studioのエージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
業界に精通しているVCや知人から情報収集する
コネクションがある場合は、スタートアップ業界に精通しているVC(ベンチャーキャピタル)や投資家、知人などに企業を紹介してもらうのも1つの手段です。
構想段階や創業したての段階からスタートアップにかかわりたい場合にはとくによい方法です。スタートアップに積極投資しているVCや投資家であれば、シード期やアーリー期の企業についても情報を得やすいでしょう。
たとえば、スタートアップVCとして代表的なインキュベイトファンドは、投資先への転職や企業を目指す人を支援する目的で「IF Talent Network」というコミュニティを運営しています。こういったコミュニティやキャリア支援を活用するのもよいでしょう。
VCや投資家から見ても、スタートアップの成長を促す人材を確保できればメリットとなります。
スタートアップに精通している知人がいれば、その人から話を聞いてみるのもよいでしょう。ただしVCや投資家と比べると情報量に差があるケースも多いため、知人がどの程度深くまで内情を知っている人物なのかという点には注意が必要です。
関連記事:【インキュベイトファンド支援事例】起業か、転職か。Spiral.AI起業の事例から考える起業家の資質
転職サイトを利用する
転職サイトを利用するのは、スタートアップに限らず、転職を検討する際には一般的な方法です。
ある程度事業が回り始めて組織が整い始めたシリーズAからシリーズB以降のスタートアップであれば、転職サイトでも求人情報を確認しやすくなるでしょう。
近年はスタートアップやベンチャーに特化した転職サイトも普及しているため、そちらを確認するのがおすすめです。
ただし転職エージェントと違って、基本的には企業情報や求人情報について自力で調べていく必要があります。
転職サイトを活用する際には企業や市場について広く情報収集をしつつ、企業とのスキルマッチ・カルチャーマッチを自分で見極めながら進めていきましょう。
SNSやニュースサイトなどを利用する
スタートアップを探す際には、SNSやニュースサイトも役立ちます。
たとえば投資家やVC、起業家などのアカウントをフォローしておけば、最新の業界トレンドや市場の傾向について、いち早くキャッチすることができるでしょう。
またプレスリリースや経済系のニュースサイトをウォッチすることで、興味のある分野や企業についての情報が見つけやすくなります。
興味がある情報を見つけたら、求人情報や経営状態についてしらべてみたり、企業に直接アプローチしてみたりすることで、転職への糸口をつかめるかもしれません。
転職するスタートアップ企業の選び方
転職したいスタートアップの候補が見つかったあとは、どのようにして選考に進む企業や内定を受諾する企業を選べばよいのでしょうか。おもに以下のようなポイントがあります。
- 自分のやりたいことや性格とのマッチ度を確認する
- 企業の将来性や資金調達状況を確認する
- 経営陣の経歴を確認する
- 実際に会社へ赴いてみる
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
自分のやりたいことや性格とのマッチ度を確認する
当たり前のように思えるかもしれませんが、自分のやりたいことや性格と、スタートアップとのマッチ度を確認することは大切です。
というのも、スタートアップのなかでもフェーズや事業内容によっては、必ずしも同じような特性の企業ばかりではないからです。
たとえば本格的に上場やM&Aを目指す段階に差し掛かったレイター期の企業であれば、EXITに向けてとにかく事業を推し進めるという経験はできるかもしれません。しかし、がむしゃらに幅広い業務をとにかく立ち上げて形にするという経験は、シード期と比較すると得にくいでしょう。
自分のやりたいことを明確にして、キャリアゴールを目指すためになぜ今スタートアップでの経験が必要なのか、という点を整理しておきましょう。そのうえで自分がやりたいことができる会社を選ぶのがおすすめです。
またスタートアップのような少人数の企業では、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に共感しているメンバーが集まってくるため、自分の性格や考え方と合わない場合はミスマッチになってしまう可能性もあります。MVVや社内カルチャーについても、自分とマッチするかどうかを確かめておきましょう。
企業の将来性や資金調達状況を確認する
サービスやプロダクトがいくら良いと感じても、実際に市場が存在し、そのうえで顧客ニーズに応えられるものでなくては、事業拡大には限界があります。
スタートアップを得るときには倒産や事業撤退のリスクを調べるためにも、企業の将来性や資金調達状況について調査しておきましょう。
企業の将来性に着目するときには、業界や市場全体が今後伸びていきそうか、そもそも大きな市場なのか、そのなかで当該スタートアップはどういう立ち位置にいるのかという点は要チェックです。
また企業の財務状況をつかむために、資金調達状況を確認しておくのも有効と言えます。可能であればPL(損益計算書)やBS(賃借対照表)、キャッシュフローなどについても確認しておきましょう。面談時に直接聞いてみるのも良いかもしれません。
資金調達の額によって、施策のために投資できるリソースの大きさも変わります。自分のやりたいことと企業の内情とのミスマッチを減らすという意味でも、資金状況を確認しておくことは大切です。
経営陣の経歴を確認する
スタートアップへ転職するときには、経営陣の経歴も重要な情報源となります。着目すべきポイントはいくつかあります。
ひとつは、どういう背景で創業したのかという点です。解決すべき社会的な課題を何ととらえ、自社サービスやプロダクトがどうやってその課題を解決できると考えているのか、を知るのは企業を理解するための第1歩にもなります。
もし代表や経営メンバーに起業歴があれば、その企業が現在までにどうなっているかを調べるのもよいでしょう。やむを得ず廃業している場合も、一概にネガティブに捉えるべきではありませんが、その人の意思決定力が信頼に足るかを判断するひとつの材料となります。
実際に会社へ赴いてみる
前述したようにスタートアップは一般企業と比べると、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や社内カルチャーとのマッチ度により重点が置かれる環境です。
しかし数回のオンライン面接や求人情報だけでは、実際の社内の雰囲気や経営陣の人柄などが分かりにくいでしょう。
そのため選考前か選考の段階で、できれば実際に会社見学や体験入社をさせてもらうのがおすすめです。
代表や経営陣のメンバーはもちろん、ほかの従業員がどのように働いているかを見ることで、社内の雰囲気やカルチャーを体感することができます。
また面と向かって直接話せることで、人物像や人となり、相手が本音で話してくれているかどうか、などの点をお互いに確認しやすくなるのもメリットです。
双方にとってマッチする転職になるかどうかを判断するためにも、可能であれば転職前に職場の雰囲気を見てみましょう。
スタートアップ企業の選考プロセスと重視されるポイント
実際にスタートアップへの転職を進めるにあたって、一般的な選考プロセスと重視されるポイントを把握しておきましょう。一般企業の選考と同じ部分もあれば、スタートアップならではの観点もあるため、面談や面接の前にあらかじめ準備をしておくことが大切です。
スタートアップ企業の選考プロセス
一般企業や大手企業では基本的に、書類選考、数回の面接、筆記テスト・適性検査などのプロセスを経て内定に至ることが多いと思われます。この際、どちらかといえば企業側が候補者に対して、自社にマッチする人材かどうかを見極めるという意味合いが強いです。
スタートアップの転職プロセスでは、もちろん書類選考や面接などの共通するフローも挟みますが、企業側と候補者側どちらもがお互いのマッチ度の高さを見極めるという意味合いが強くなります。
最初のカジュアル面談や一次面接では、企業側からMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や社内カルチャーについて説明されることが多いです。候補者がそこに共感できるかどうか、マッチ度を見極めたうえで次の選考プロセスに進みます。
二次面接以降では、スキル面や経歴も含め、より細かいすり合わせが行われていくでしょう。企業が求める人材像と候補者とのあいだでスキルマッチを確認しつつ、具体的に会社でおこなう業務内容や期待される役割・成果を確認していくことになります。
企業によっては、最終面接の前などにランチ会や会食を開くこともあります。社内メンバーと候補者とでカジュアルに話す場を設けることで、パーソナリティを含めてお互いのマッチ度を確認する目的であることが多いです。これはスタートアップならではと言えるかもしれません。
選考プロセスのなかで、具体的な経営戦略や財務状況について議論を交わすこともあり得ます。そのためスタートアップが公開している資料やサイトにはひと通り目を通しておき、自分の考えをまとめて質問リストを用意しておくと、より面接の場が有益になるかもしれません。
スタートアップ企業の選考で重視されるポイント
スタートアップの選考で企業側がとくに重視するのは、事業やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への熱意・共感です。「お互いが一緒に働きたいと思えるか」と言い換えることもできるかもしれません。
あらためて書きますと「新しい技術やサービスを用いて」「短期間でEXITを目指す」のがスタートアップのおもな特徴です。
とくに短期間でのEXITを実現するためには、事業が提供する新しい価値に心から共感し、熱意をもって業務に取り組むことが前提となります。
もちろん事業を成功に導くことのできる人材と判断できるような経歴やスキルも大切ですが、企業が一丸となって本気で事業を成功させるためには、スキルセットだけでなくマインドセットも大切なのです。
スタートアップには事業撤退などのリスクを伴うぶん、企業側も「同じリスクを背負いながら成功に向かって一緒に邁進できる仲間」を求めていくのは、当然といえば当然かもしれません。
「選考を有利に進めるために」というよりは、「自分の熱意や共感を素直に伝えきる」ために、企業や事業に対して共感しているポイントや熱意を整理して話せるように準備しておくとよいでしょう。
『Startup Frontier』を運営するProfessional Studioは、スタートアップに特化したキャリア支援を行っています。エージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。