ベンチャー企業での執行役員の年収は、企業の規模や成長フェーズによって大きく異なることが一般的です。特に中小企業や零細企業、上場企業など、企業の状況に応じて年収の相場や役職の重要性が変わります。
そこで本記事では、執行役員の役割や年収の実態について解説するとともに、ベンチャー企業でこのポジションに就くために必要なスキルや注意点についても詳しくご紹介します。
執行役員とは?
執行役員とは、企業の経営において重要な役割を担う職位であり、取締役会の決定に基づいて日常的な業務を執行する責任を持っています。ここでは、執行役員について説明します。
執行役員と取締役の違い
執行役員と取締役は、企業の経営において重要な役割を果たしますが、その役割や責任には明確な違いがあります。
まず、取締役は企業の経営方針や戦略を決定する役割を担い、株主の利益を代表する立場にあります。取締役会を構成し、企業の重要な意思決定に関与するため、経営全般に対する広範な視野が求められます。
一方、執行役員は、取締役会で決定された方針や戦略を実行に移す役割を持っています。具体的には、日常の業務運営や部門のマネジメントを担当し、実務的な視点から企業の目標達成に向けた施策を推進します。
執行役員は、取締役に比べてより具体的な業務に関与するため、専門的な知識やスキルが求められることが多いです。
執行役員と執行役の違い
執行役員と執行役は、企業の経営において重要な役割を果たすポジションですが、会社法の定めによるか否かで扱いが異なります。
執行役は、役員の中でも指名委員会設置会社に置く役職です。
指名委員会等設置会社とは、取締役の指名や役員報酬、役員の職務執行の監査に関して、社外取締役で委員会を設置した会社を指します。
しかし、異なるのはその立場であり、執行役は法律上の役員・機関として機能するもの、執行役員はあくまで従業員の中でしかるべき役職の人材が同様の役割を果たすものです。
執行役員の年収相場
執行役員の年収は、企業の規模や業種、成長フェーズによって大きく異なります。ここでは、執行役員の年収相場について詳しくみていきましょう。
大企業の相場
大企業における執行役員の年収は、一般的に非常に高い水準にあります。
具体的には、年収は1,500万円から3,000万円以上に達することが多く、企業の業績や役員の経験、専門性によっても大きく変動します。
特に上場企業の場合、株式報酬やボーナスが加わることで、年収がさらに増加する傾向があります。
また、大企業では執行役員が担う役割も多岐にわたります。経営戦略の策定や実行、部門間の調整、さらには外部との交渉など、企業の成長に直結する重要な業務を担当するため、その責任の重さが年収に反映されるのです。
中小企業(ベンチャー企業含む)の場合
中小企業やベンチャー企業における執行役員の年収は、大企業と比較すると一般的に低めに設定されることが多いです。具体的には、年収の相場はおおよそ800万円から1,500万円程度が一般的であり、企業の成長段階や業種によっても大きく変動します。
特に、創業間もないスタートアップ企業では、資金繰りの厳しさから執行役員の年収が抑えられることが多く、初年度は500万円程度からスタートするケースも珍しくありません。
一方で、企業が成長し、資金調達や売上が安定してくると、執行役員の年収も徐々に上昇する傾向があります。特に、シリーズAやシリーズBの資金調達を成功させた企業では、執行役員の年収が1,000万円を超えることもあります。
ただ、IPOを目指しているベンチャー企業の場合には、役員報酬の他に、ストックオプション等の株式報酬を得ているケースが多いです。
ベンチャー企業の執行役員になるためには
ベンチャー企業の執行役員に就くためには、いくつかの道筋があります。ここでは、ベンチャー企業の執行役員になるための方法をいくつか紹介します。
知人の会社に入る
ベンチャー企業の執行役員になるための一つの方法として、知人の会社に入るという選択肢があります。
特にスタートアップや中小企業では、信頼関係が重視されるため、知人や友人の紹介を通じてポジションを得ることが可能です。このアプローチは、企業文化や業務内容を事前に理解しやすく、スムーズに職場に馴染む助けにもなります。
知人の会社に入る際には、まずその企業のビジョンやミッション、成長戦略をしっかりと把握することが重要です。これにより、自分がどのように貢献できるかを具体的に考えることができ、面接や話し合いの際に説得力を持たせることができます。
また、知人からの推薦があることで、他の候補者と比較して優位に立つことができる点も魅力です。
ただし、知人の会社に入る場合は、プライベートと仕事の境界を明確にすることが求められます。友人関係が影響を及ぼすことなく、プロフェッショナルな態度で業務に取り組むことが、信頼を築く鍵となります。
ヘッドハンティングされる
ベンチャー企業の執行役員としてのキャリアを築く一つの方法として、ヘッドハンティングが挙げられます。
ヘッドハンティングされるためには、まず自分自身の専門性や実績を明確にしておくことが必要です。業界内でのネットワークを広げたり、専門的な知識を深めたりすることで、自身の市場価値を高めることができます。
また、SNSやビジネスプラットフォームを活用して、自分のスキルや経験をアピールすることも効果的です。
さらに、ヘッドハンターとの関係構築も重要です。信頼できるヘッドハンターとつながることで、より多くの機会を得ることができるでしょう。彼らは業界の動向や企業のニーズを把握しているため、適切なタイミングでのアプローチが期待できます。
役員求人に応募する
ベンチャー企業の執行役員になるための一つの方法として、役員求人に応募することが挙げられます。
このアプローチは、特に自分の専門性や経験を活かしたいと考える人にとって有効です。役員求人は、企業が特定のスキルや知識を持った人材を求めているため、応募者は自分の強みをアピールすることが重要です。
役員求人は一般的に、企業の成長段階やニーズに応じて多様な役割を提供します。
例えば、資金調達や新規事業の立ち上げ、マーケティング戦略の策定など、企業が直面する課題に対して解決策を提供できる人材が求められます。そのため、応募者は自身の過去の実績や成功事例を具体的に示すことが求められます。
また、役員求人は通常、企業の経営陣との面接を通じて行われるため、コミュニケーション能力やリーダーシップも重要な要素となります。企業文化やビジョンに共感し、チームとしての協力ができるかどうかも評価されるポイントです。
ベンチャー企業の執行役員に必要とされるモノ
ベンチャー企業の執行役員として成功するためには、いくつかの重要な要素が求められます。ここでは、ベンチャー企業の執行役員に必要とされることについて解説します。
専門スキル
ベンチャー企業の執行役員に求められる専門スキルは、その企業の業種やビジネスモデルによって異なりますが、一般的には高度な専門知識と実務経験が必要です。
例えば、テクノロジー系のスタートアップでは、ソフトウェア開発やデータ分析に関する深い理解が求められることが多く、マーケティング系の企業ではデジタルマーケティングやブランディングの専門知識が重要視されます。
また、執行役員は企業の戦略を立案し、実行する役割を担うため、専門スキルだけでなく、業界のトレンドや競合分析に基づいた判断力も必要です。これにより、企業の成長を促進するための適切な戦略を策定し、実行に移すことが可能になります。
業界への知見
ベンチャー企業の執行役員に求められる重要な要素の一つが、業界への深い知見です。特に、競争が激しい市場環境においては、業界のトレンドや競合他社の動向を把握することが不可欠です。
執行役員は、企業の戦略を策定し、実行する立場にあるため、業界の特性やニーズを理解していることが求められます。
業界への知見は、単に過去の経験に基づくものだけではなく、常に変化する市場環境に適応するための情報収集能力も含まれます。
例えば、新しい技術の導入や消費者の嗜好の変化、法規制の改正など、さまざまな要因が業界に影響を与えます。これらの情報を敏感にキャッチし、企業の戦略に反映させることが、執行役員としての重要な役割となります。
分かりやすく、再現性のある成果成果へのこだわり
ベンチャー企業の執行役員に求められる重要な要素の一つが、分かりやすく、再現性のある成果を出す能力です。
特に、限られたリソースの中で迅速に結果を求められるベンチャー企業では、成果を明確に示すことが求められます。これは、投資家やステークホルダーに対して信頼を築くためにも不可欠です。
具体的には、数値やデータを基にした成果の提示が重要です。例えば、売上の増加率や顧客獲得数、コスト削減の実績など、具体的な数字を示すことで、成果の再現性を証明することができます。
また、これらの成果をどのように達成したのか、そのプロセスを明確に説明できることも大切です。これにより、他のメンバーやチームが同様のアプローチを取ることができ、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
経営やマネジメントへの理解
ベンチャー企業の執行役員として成功するためには、経営やマネジメントに関する深い理解が不可欠です。
執行役員は、企業の戦略的な方向性を決定し、日々の業務を円滑に進めるための重要な役割を担っています。そのため、経営の基本的な理論や実践的なスキルを身につけることが求められます。
まず、経営戦略の策定能力が重要です。市場の動向を分析し、競争優位を築くための戦略を立案することが求められます。また、財務管理の知識も欠かせません。予算の策定や資金調達、コスト管理など、企業の健全な運営を支えるための財務的な視点が必要です。
さらに、マネジメントスキルも重要です。チームを効果的にリードし、メンバーのモチベーションを高めるためのコミュニケーション能力や、問題解決能力が求められます。特に、ベンチャー企業では変化が激しいため、柔軟な思考と迅速な意思決定が求められます。
執行役員になったときの注意点
ベンチャー企業の執行役員としてのキャリアは魅力的ですが、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
年収2,000万円を超えると確定申告が義務に
執行役員として年収が2,000万円を超える場合、確定申告が義務付けられます。
これは、所得税法に基づくもので、年収が一定の金額を超えると、税務署に対して自らの所得を申告しなければならないためです。確定申告を行うことで、過不足の税金を精算し、適正な税負担を確保することが求められます。
確定申告の手続きは、一般的に複雑で時間がかかることが多いですが、特に高額所得者の場合は、税務上の優遇措置や控除を最大限に活用することが重要です。例えば、医療費控除や寄付金控除など、さまざまな控除を適用することで、税負担を軽減することが可能です。
税負担が増える
執行役員としての年収が2,000万円を超えると、税負担が大きく増加することに注意が必要です。
日本の所得税は累進課税制度を採用しており、所得が高くなるほど税率も上がります。具体的には、年収が高くなるにつれて、最高税率が適用される部分が増え、結果として手取り額が減少します。
また、年収が高い場合、住民税や健康保険料、年金保険料などの負担も増加します。これらの税金や保険料は、年収に応じて計算されるため、執行役員としての高い年収は、単に給与が増えるだけでなく、さまざまな税金や保険料の負担も増えることを意味します。
雇用保険に加入できない場合がある
ベンチャー企業の執行役員として働く際、雇用保険に加入できない場合があることを理解しておくことは重要です。
一般的に、雇用保険は労働者を保護するための制度であり、失業時の生活を支える役割を果たします。しかし、執行役員はその職務の性質上、労働者としての位置づけが異なるため、雇用保険の適用外となることが多いのです。
具体的には、執行役員は企業の経営に関与する立場にあり、経営者としての責任を負うことが求められます。このため、労働基準法における「労働者」とは見なされず、雇用保険の加入対象外となることがあります。
特に、役員報酬が高額である場合、雇用保険に加入することができないケースが増える傾向にあります。
同業他社への転職が一定期間できない場合がある
ベンチャー企業の執行役員としてのキャリアを築く際、注意が必要な点の一つが同業他社への転職に関する制約です。
多くの企業では、執行役員や経営層に対して競業避止義務を設けており、退職後一定期間は同業他社での就業が禁止されることがあります。この制約は、企業の機密情報や戦略が外部に漏れることを防ぐために設けられています。
具体的には、退職後1年から2年の間、同業他社での勤務ができないケースが一般的です。この期間は、企業によって異なるため、契約書や就業規則をしっかりと確認することが重要です。また、競業避止義務が適用される範囲も、業種や地域によって異なるため、自身のキャリアプランを考える上で慎重に検討する必要があります。
まとめ
ベンチャー企業の執行役員は、企業の成長において重要な役割を担っています。年収は企業の規模や成長フェーズによって大きく異なり、大企業と比較すると中小企業やベンチャー企業では相対的に低い場合もありますが、その分、役員としての責任や影響力は大きくなります。
本記事を通じて、執行役員の役割や年収の実態、そしてこのポジションに就くために必要なスキルや注意点について理解を深めていただけたでしょうか。ベンチャー企業でのキャリアを考える際には、これらの情報を参考にし、自身の目標に向かって計画的に進んでいくことが重要です。