テクノロジーの進化により生活のあらゆる場面が効率化される中、医療の現場には未だアナログな慣習が色濃く残っています。この課題に対し、単なるシステム提供にとどまらず医療機関との連携を通じて、クリニックでの医療体験そのもののアップデートに挑戦しているのが、株式会社Linc’wellです。
対面とオンラインを融合させた独自の事業モデルは、いかにして生まれたのか。コロナ禍でのハードシングスを救った開発秘話、患者さんの滞在時間を徹底的に削るオペレーション、そして「事業家視点」を求める組織づくりまで。COOの氷熊大輝氏に、Professional Studioを活用した採用戦略を含めて語っていただきました。
【Profile】
株式会社Linc’well 最高執行責任者COO 取締役 氷熊大輝氏
東京大学大学院 経済学研究科修了。マッキンゼーを経てLinc’wellに参画し、COOに就任。支援先の医療機関へ提供するオンライン診療システム提供サービスをはじめ、Linc’wellの各事業領域にて事業拡大を主導。医療DXと患者体験の向上に取り組み、誰もが利用しやすい次世代のプライマリ・ケア・プラットフォームの社会実装を牽引している。
医療機関と伴走しながら医療体験を社会実装する事業モデル

── まずはLinc’wellが現在展開している事業内容についてお伺いできますか。
ひと言でいえば「徹底的に便利な次世代型クリニック」を医療機関の方々と一緒に作り上げる事業を手がけるグロース企業です。
「次世代型クリニック」というと何か特殊な先端医療のように聞こえるかもしれませんが、目指しているのはもっと身近なインフラといえるものです。ホームケアからオンライン診療、さらに対面診療までシームレスな体験ができるヘルスケアプラットフォームを提供しています。
── 具体的にはどのようなサービスを展開しているのでしょうか?
ひとつは患者さんの医療体験にフォーカスしたオンライン診療システム提供サービス。もうひとつは、支援しているクリニックの来院予約から決済、検査結果の確認までスマートフォン1台で完結するスマートクリニックのデジタル実装支援で、これはクリニックDX支援と呼んでいるものですね。
さらに領域をホームケアにまで広げ、シャンプー・サプリ・ドクターズコスメ・コンタクトレンズなどを提供するヘルスケアEC事業も展開しています。最近ではここにBtoB事業が加わって、ますます価値提供の機会が拡大しているところです。
── 医療機関とはどのような関係性で事業を行っているのでしょうか。
ここが一般的な医療系スタートアップと大きく異なるところです。多くの企業は電子カルテや予約システムなどのSaaSを開発し、それを多数の医療機関に販売して使ってもらうモデルです。
一方、私たちは「システムの導入支援」にとどまりません。クリニックを支援し、医療行為以外のマーケティングや新規院の開業支援などをLinc’wellが担う、いわば「伴走型」ともいえるスタイルをとっています。

── なぜ、そこまで深く入り込む必要があるのですか?
従来のクリニックでは院長先生が診察するだけでなく、看護師や事務の採用・マネジメント、集患のためのマーケティング、さらには経理やシステムの管理まで背負わなければなりませんでした。これでは結果として患者さんにとっての利便性の追求が後手に回るのも致し方ありません。
だからこそ役割分担を明確にして、医師には本来の職務である診察に100%集中していただく。それ以外のマーケティング、システム開発、オペレーション構築などはLinc’wellが支援する、というスキームを構築しているのです。
── 一件一件深く入り込むとなるとスケールさせるのが難しそうですが。
確かに現在のサービスをいきなり何千もの医療機関に導入するのは不可能です。しかし一つの拠点で最高の患者体験を作り込めば、その商圏に住む患者さんから選ばれるクリニックになり得ます。
様々な医療機関に対して既成のツールを展開していくのではなく、一つひとつ確実に「便利な医療体験」を社会実装していく。遠回りに見えるかもしれませんが結果として患者さんが集まり、広がりも早くなり得ると考えています。
── 事業の広がりとしては、どのような世界観を描いていますか。
私たちが目指すのは、1つのプラットフォーム上で、風邪も診てもらえるし、肌の悩みも相談できる。さらにコンタクトレンズやドクターズコスメも適切な形で手に入れることができる。対面診療だけでなく、オンライン診療やECも含めて、ヘルスケアの悩みなら「ここで全部解決する」というプラットフォームの実現です。
「2020年問題」とアナログな医療現場への違和感

── そもそも、なぜこの「医療の不便さ」を解消しようと考えたのですか? 参画のきっかけを教えてください。
原点は、私が新卒で入社したコンサルティング会社時代に描いていた未来と、現実とのギャップにあります。
2012年頃、コンサルティング業界では『2020年のヘルスケア産業』をテーマに、デジタル化を前提としたさまざまな未来像が語られていました。ウェアラブル端末による健康管理や、医療データがシームレスにつながる世界が当たり前になる——そんな議論が活発に行われていたんです。私自身も、そうした未来が近い将来に実現するものだと自然に受け止めていました。
── 実際、2020年に近づいた頃、医療現場はどうなっていましたか?
Linc’wellの創業は2018年なのですが、ちょうど私がたまたま体調を崩して久しぶりにクリニックに行った時、目の前の光景に愕然としました。かつて描いていた未来とはほど遠い、圧倒的にアナログなままの世界だったからです。
平日の夜は閉まっていて、土曜日は半日ほど待たされる。医師は紙のカルテに手書きで記入し、支払いは現金のみ。これでは日々、忙しく働いているビジネスパーソンは、多少の体調不良ぐらいではクリニックの門を叩くことすらしないだろうと思いました。

── 確かに他の業界の進化と比べると遅れは顕著ですね。
世間では他業界がどんどん便利になっていく中で、無人コンビニの実証実験が始まっていた時期です。片や最先端のテクノロジーで無人化が進んでいるのに、なぜ人の命に関わる医療だけがこんなにレガシーで不便なままなのか。
待っていても誰かが変えてくれるわけじゃありません。それなら自分たちでやるしかない。そう考えて、コンサルティング会社時代の先輩である共同創業者たちと共に「とにかく便利なクリニックを作る」というチャレンジを始めたのです。
── 最初から今のモデルが確立されていたのですか?
いえ、試行錯誤の連続です。まずはじめに医療機関とタッグを組んだクリニックを田町に作り、ビジネスパーソン向けに徹底的に利便性を高めました。幸いなことにそれが世の中に受け入れられ、新橋などのビジネスエリアに広がり、さらに池袋のような繁華街を経て巣鴨や浅草橋のような居住エリアへと展開していきました。
コロナ禍での変革と、秒単位で削り出すオペレーションへの執着

── 創業後の最大のハードシングスはやはりコロナ禍でしょうか。
おっしゃる通りです。当時は「当社がクリニックDX支援サービスを提供しているクリニックを100拠点以上に拡大する」という計画を掲げ、資金調達を経てアクセルを全開に踏み込んでいました。ところがコロナ禍で患者さんの足が止まり、クリニックの対面診療は非常に厳しい局面に立たされました。
── その危機をどう打開したのでしょうか。
2020年4月、政府が時限措置として「初診からのオンライン診療」を解禁したのが大きな転機になりました。
実はコロナ禍以前から、オンライン診療に関する構想はあり、すでにプロトタイプを用いた実証実験を医療機関とともに細々と進めていたんです。この機を逃してはならない、と解禁までの2週間という猶予の中でプロトタイプを急ピッチで改修し、患者さんが使えるレベルのサービスとして世に出すことにチャレンジしました。エンジニアたちはオフィスに寝袋まで持ち込む勢いで、開発に没頭しました。今ならワークライフバランスの観点で議論になりそうですが(笑)、当時は経営陣から現場まで全員が「医療を止めてはいけない」「ここで会社を守り抜くんだ」という一心だったんです。
もちろん2週間ですべてを完璧にすることは不可能です。ユーザーの目に触れる体験部分はデジタル化しつつも、システムで完結できない裏側は徹底した人力のオペレーションでカバーする、いわば泥臭い総力戦でなんとかリリースに漕ぎ着けました。このスピード対応が結果として多くの患者さんに受け入れられ、会社を救うとともに、現在の対面とオンラインを融合させたハイブリッドモデルの確立へと繋がったのです。
── 現在もその「スピードへのこだわり」はシームレスな医療体験に生かされていますか?
もちろんです。私たちは「患者さんの時間を奪わない」ことに徹底的にこだわっています。一般的な病院では、受付から会計まで1時間以上かかることも珍しくありませんが、当社が支援するクリニックでは滞在時間を可能な限り短くしています。

── 具体的に、どうやってそのスピードを実現しているのですか?
戦略は極めてシンプルです。 患者さんが来院してから帰るまでの「総滞在時間」に着目しました。この時間が長引けば長引くほど院内は混雑し、稼働率は下がってしまいます。
クリニックDX支援サービスの立ち上げ時、1院目のクリニックで最初に取り組んだのは、患者さんがクリニックに入ってから出るまでの行動フローの可視化でした。「受付から診察までの待ち時間」「問診票を書く時間」「診察時間」「会計待ち」「薬の処方待ち」……これらをヒストグラムのように積み上げ、どの工程にどれだけの時間がかかっているのかを徹底的に分析しました。
そこから導き出した私たちの結論は「診察にかける時間とクオリティは絶対に下げず、最大化する。それ以外の時間を極限まで短くする」というものでした。
診察以外のあらゆる「待ち時間」や「事務作業」をシステムやオペレーションの工夫で、あの手この手を使って短縮し、患者さんが院内に滞在しなければならない時間を最短に抑える。これを第一目標としてやりきりました。
ここで陥りやすいのが「時間短縮=診察は適当」になってしまうことですが、私たちはそこを明確に区別しています。目指したのは「診察はしっかりとしてもらえたのに、終わるのが早い」という体験です。 これを徹底した結果、クリニックの稼働率が向上しただけでなく患者さんの満足度にも繋がり、多くの来院に結びついているのだと確信しています。
システムとオペレーション、そして医師のスキルが噛み合って初めて実現できるスピードであり、これが他社には真似できないLinc’wellが有する競争優位性といえるでしょう。
事業家を育てる組織構造と、第一想起される存在を目指す

── 組織についてもお伺いします。エンジニアとビジネス職が混在する組織とのことですが、どのようなカルチャーですか?
Linc’wellには『PATIENTS FIRST』や『CHALLENGE STATUS QUO』をはじめとする4つのバリューがあります。
私が考える「企業文化」とは掲げられた言葉そのものではなく、そのバリューを現場で体現している人たちが醸し出す「雰囲気」の積み重ねによって作られるものです。だからこそ特に組織の人数が増えている現在においては、バリューをどう日々の仕事に落とし込むかという点を非常に大切にしています。
なかでもメンバーの多くが共通して強く持っているマインドが、一つ目のバリューである『PATIENTS FIRST』です。直訳すれば「患者さん第一」となりますが、社内ではこれをもう少し踏み込んで、「自分の家族や周りの大切な人に、胸を張って誇れるサービスを作ろう」という意味で定義しています。
──なるほど、その意味だと 自ずと目の前の仕事が自分ごとになりますよね!
おっしゃる通りです。ただ単に業務としてサービスを作るのではなく、自分自身や自分の家族がユーザーになった場面を想像し「自分も欲しいし、家族にも使ってほしい」と心から思えるものを作っていく。つまりサービス開発を他人事ではなく「自分ごと」として捉える姿勢ですね。「これがあったら便利だよね」という実感を大切にできる人であってほしいですし、実際にそういう熱量で働いているメンバーが当社には多いと感じています。
この「大切な人に誇れるサービスを作る」という想いが根幹にあり、それを実現しようとすると当然、多くの困難やチームでの協力が必要になります。そこで互いを支え合う『RESPECT DIVERSITY』や、最後までやり抜く『COMPLETE WORK』、現状を変えていく『CHALLENGE STATUS QUO』といった他のバリューが有機的に関わってくる。根底にある想いと、それを支える行動指針が組み合わさって、Linc’wellでの働き方やスタンスが形作られているのだと思います。
── ではそんなLinc’wellが求める人材とは、どのようなタイプでしょうか?やはり一定の医療への知見があったほうがいいとか…
実は元々医療業界に携わっていたメンバーよりも異業界から来たメンバーのほうが圧倒的に多いんです。医療業界は難しそう、と足踏みされる方もいらっしゃるかもしれませんが、全くそんなことはありません。むしろ既存の医療の「当たり前」にどっぷりと浸かっていないことが強みになるとさえ思っています。
重要なのは純粋な一人のユーザーとしての視点です。「他の業界ならこうなっているのに、なぜ医療だとこうなのだろう?」「自分が患者なら、もっとこうなっていてほしい」という素朴な疑問を持ち、そこをスタート地点として課題解決に向かえる人がマッチしています。

もちろんアイデアを形にしていく上では、医療現場の実情や守るべきルールを理解する必要があります。ですが、専門的な知識は実務を通して走りながら学んでいけば十分です。社内には医師や看護師のチームがいますし、法的な要件についてもコーポレートや法務部門がしっかりとしたガイドラインでサポートする体制が整っています。
業界の慣習に囚われずに発想できる方は非常に歓迎されますし、実際に社内でも多いですね。医療現場の深い知見を持つ方も不可欠ですが、新しい事業を作っていく上では医療の常識を知らないからこそ持てる視点も同じくらい重要です。医療経験の有無に関わらず、どちらのバックグラウンドの方でも安心して飛び込んできていただければと思います。
── そうなんですね!ほかに持っていてほしい適性などあればぜひ…
あえて求めるとするなら職種を問わずリードできる人材、つまり「事業家視点」を持てる人材ですね。当社はピラミッド型の組織ではなく、支援先のクリニックで提供している診療科やサービスごとに小さなユニットを作り、そこで機動的に推進出来る体制としています。
また、女性商材だから女性がやるべき、といった固定観念はありません。女性向けのコスメサービスの立ち上げを男性社員がリードすることもありますし、エンジニアが事業責任者を務めることもあります。むしろ当事者じゃないからこそフラットにデータを見て、ユーザーの本当のニーズを掘り下げられることもある。重要なのはその事業を「自分の事業」だと思って牽引できるマインドです。
── 採用においてProfessional Studioのサービスをご利用になられていますが、感想をお聞かせ願えますか?
Professional Studioさんの候補者様紹介の特徴として、選考の最終フェーズに残る確率が圧倒的に高い点が挙げられます。つまり各ポジションに求める要件の深い理解だけでなく、先ほどお話ししたようなLinc’wellのカルチャーや雰囲気についてもしっかり汲み取ってくださっているんだと感じています。直近でもリードクラスの採用が決まりましたが、会社規模が大きくなっても変わらない根幹の部分を共有できているので、ハイレイヤー採用においては特に信頼しています。
── 最後にLinc’wellをどのような会社にしていきたいか、ビジョンをお聞かせください。
私たちのサービスが「動詞」として使われるくらい、みなさんの生活に浸透させていきたいですね。検索することを「ググる」、QR決済することを「PayPayする」と言うように、体調が悪くなったら「クリフォアしよう」という会話が日常になる世界を作りたい。そのためにも誰にとっても第一想起される存在を目指していきます。
ある投資家の方に「日常的に使われる当たり前のサービスを使う側ではなく、作る側になる体験。それは人生でそう何度も味わえるものじゃない」と言われたことがあります。私たちはいま、まさにそのフェーズにいます。
「これ、私たちが作ったんだよ」と家族や友人に誇れる仕事ができる。そんな稀有な機会が、いまのLinc’wellにはあふれています。このワクワクを共有できる方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
「2020年の未来」が来ないなら、自分たちで作ればいい──
氷熊氏の言葉からは既存の不条理に対する冷静な分析と、それを泥臭い実行力で解決しようとする熱量が同居しているのが伝わってくる。彼らが作っているのは単なるシステムではなく、患者の人生という時間を豊かに彩る「体験」そのものだ。
エンジニアもビジネス職も関係なく、全員が「事業家視点」をもって医療変革に挑むLinc’well。その採用において、Professional Studioは同社のカルチャーを熟知したパートナーとして伴走している。医療といえば…と、第一に想起される存在になる。その野望に共鳴するなら、いまこそその扉を叩くべき時だろう。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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