製造業特化のスキルマネジメントシステムで、世界シェアNo.1を狙う【株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏】

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

『つくる人が、いきる世界へ』というビジョンを掲げ、スキルマネジメントシステム「Skillnote」をグローバルに展開する株式会社Skillnote。代表取締役の山川 隆史氏は10年間大手メーカーに勤め、世界中の製造現場を見てきた。そのとき、徐々に勢いを失う日本の製造業と、世界トップシェアを誇る外国企業との間にある「人」の差を痛感。世界にイノベーションを起こす、最高にかっこいい日本の製造業界に貢献すべく、スキルマネジメントシステムを開発し、株式会社Skillnoteを設立した。

代表取締役の山川 隆史氏に、これまでの歩みと今後の展望を伺った。話を聞くうちに、日本発で世界トップシェアを狙えるプロダクトのかたちが見えてきた。

【Profile】

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

早稲田大学理工学部卒。信越化学工業株式会社入社。電子材料事業本部にて新規技術のビジネス開発や開発品の市場開拓などに従事。10年間にわたり、半導体用材料の次世代技術開発など、アジア・欧米のグローバル企業とのプロジェクトに多数参画。2006年3月に製造業の人材育成を支援する会社を創業、2016年1月に株式会社Skillnoteを設立、現在に至る。2006年以降、製造業の人材育成、スキルマネジメントの課題に取り組んでいる。

目次

独立、起業、プロダクト開発、大好きな製造業のために

ーーはじめにSkillnoteを立ち上げるまでのストーリーをお伺いしたいです。

私はもともと信越化学工業という企業に10年間勤めていました。工場勤務を含め、さまざまな業務を経験しましたが、一番長く携わったのは半導体に使われる電子材料の海外営業です。半導体業界は移り変わりが激しく、私が在籍していた2000年頃は日本が徐々にシェアを落としている時期で、順調な企業とそうでない企業とが顕著に分かれ始めていました。

多くの企業を見るうちに、事業が成功するかどうかを決定づける、もっとも大きな要素は「人」であると考えるようになりました。今でもよく覚えているのは、当時勢いのあったインテル社の工場見学にいったときの衝撃です。若くて勢いのある人が多く、私は質問攻めに合いました。「今、すべての情報を聞き出すのだ」というハングリー精神を感じ「こんな人たちが1万人もいれば、シェアNo.1にもなるよな」と納得しましたね。

一方、日本の製造業では閉塞感の漂っている現場が多くありました。現場で働く人たちのなかには、目の前の業務をただ繰り返すだけで、目標もなく仕事をする人も多くいる状況だったのです。製造の仕事は本来、新しいものを生み出し、社会に価値を生み出すイノベーティブでかっこいい仕事です。にもかかわらず、輝いていない人たちが多いことに課題感を抱きました。

インテルと日本企業とで何が違うのかと調べるうちに、育成の仕組みの違いに辿り着きました。インテルでは、日本の製造会社では見かけないシステマティックな教育制度が導入されていたのです。この人材育成の仕組みを日本の企業にも伝えられれば、製造現場で働く多くの人に貢献でき、業界全体の底上げにつながると思いました。そこで信越化学工業を退職し、製造業向けの研修会社を起業したのです。

技術研修を含め、製造業に特化したサービスを提供するなか、とある電機メーカー幹部から「研修も大事だけど、そもそも研修が必要かどうかを判断するには、社員一人ひとりのスキルの可視化が重要」という話を聞きました。会社として数年後に目指す姿から逆算して「足りていないスキルはこれだ」と把握できなければ、教育に投資をする決断も、何から始めるかの優先順位づけも難しいと言われたのです。

納得したのと同時に「スキル管理のプロダクトづくりはおもしろそうだ」とも思いました。研修は、毎回数十名を対象に実施していますが、それだと何万回も実施しなければ世の中を変えることはできません。しかしプロダクトであれば、最高にいいものを1つ生み出せれば、世界中の人に一気に届けられ、一瞬で世の中を変える可能性があると思ったのです。そこで、製造業向けの人材スキル管理システムづくりに着手し始め、開発したプロダクトを軸にして新しく立ち上げた会社が株式会社Skillnoteでした。

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

日本に競合がいない、製造業特化の細かいスキル管理システム

ーーあらためて、スキルマネジメントシステム「Skillnote」とはどのようなプロダクトなのか教えてください。

組織や従業員が持っているスキルデータを一元化・可視化することで、製造業の事業課題の解決と個人の成長を支援するシステムです。

ーー他のスキル管理サービスとの違いはどこにあるのでしょうか?

一番大きな違いは、製造業に特化したシステムであることです。

一般的なタレントマネジメントシステムで管理できるスキルは、コミュニケーション能力やリーダーシップなど、マネージャー層がチームの目標管理をするうえで必要な能力が大半です。一方、製造現場で求められるスキルは「溶接」「素材切断」「外面研削」など専門性が高く、細かく別れている特徴があります。

さらに、一つひとつのスキルには、その修得ができているかどうかを判断するための細かいチェックポイントが存在します。たとえば「溶接」の場合、「溶接経験のあるアルミ板の厚さ」「溶接時の姿勢」などです。製造の場合、客観的にスキルの評価ができなければ、製品の品質に影響を及ぼす可能性があります。船や飛行機などに使われるパーツの場合、人命にも関わるため、可能な限り厳格に各人のスキルを把握する必要があるのです。

ーー非常に細かく、客観的に判断できる基準を設けているのだと理解しました。それができているのは、山川さん自身が製造業出身であり、現場のことをよくわかっていることが大きいのでしょうか?

そうですね。私に限らずSkillnote社には、製造業界に携わった経験のあるメンバーが多いです。また創業以来、さまざまな製造現場へ実際に伺わせてもらい、そこで働く方々と会話をしてきたことも大きいです。同じ目線・言葉でコミュニケーションを重ねることで、現場になじむプロダクトづくりができているのかなと思います。

ーー競合となる企業は存在するのでしょうか?

製造の現場に特化したスキルマネジメントシステムは、少なくとも日本には他にありません。海外では、最近になって2社ほど、似たような着眼点でプロダクトづくりをおこなうスタートアップも出現していますが、まだまだSkillnoteが機能面でも導入企業数でもリードしている状況です。

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

グローバル展開で世界シェアNo.1を狙う

ーーSkillnoteはすでに日本では川崎重工業やTHKなど大手をはじめ、150社以上に導入されています。そのうえ、世界展開も進めている狙いを教えてください。

もちろん、世界トップシェアの製造業専用スキルマネジメントシステムになることです。

製造業の世界では、「ISO規格」を筆頭に品質の国際規格があります。それに伴って、社員に身につけさせたいスキルもほとんど同じです。日本企業で受け入れられるプロダクトがつくれていれば、世界企業にも通用する可能性は大きいと考えています。

とくに我々は、製造業の企業が多い日本に拠点を置いており、プロダクト開発の観点からは非常に有利だと考えています。多くの企業さまにSkillnoteを使ってもらいながら、現場からの生の声をベースに、さらなるブラッシュアップができるからです。また、グローバルに展開している日系企業も多く、日本で深く関係性構築を進めることで、海外拠点でSkillnoteを使ってもらう道筋がつけやすいとも感じています。

ーーSkillnote社は富士通やSAPといった、グローバル企業との提携も実現させています。なぜ、スタートアップにもかかわらず、多数の大企業からプロダクトの導入をしてもらえたり、パートナーとして協業したりできているのでしょうか?

私としては特別なことをしているつもりはなく、事業成長に必要な交渉を、必要な相手と普通に進めているつもりでした。うまくいっている背景には、私やメンバーに大企業での勤務経験があり、同じ目線で話をできることがあるのかなと思っています。社会人になってすぐに起業をし、大企業に勤めたことがない人と比べると、相手の立場に立って考えられているのかも知れません。

ーーSkillnote社が掲げるビジョン「つくる人が、いきる世界へ」に込められている思いについても教えてください。

簡単に言うと、企業の競争力の源泉である「人」が成長し、モチベーション高く働ける仕組みをつくりたいという思いを込めて、このビジョンにしています。個人的には、日本の製造業が弱ってきていることに危機感をもっていて、かつて「製造立国」と呼ばれた姿を取り戻したいという思いもありますね。

また「世界を変える」と言っているからには、我々の展開する事業が世界中に浸透することが必要だとも思っています。日本初のプロダクトが世界を席巻すること自体が、日本の「製造立国」としての立場をもう一度世界に示すことにもつながるはずです。

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

誠実な人が多く、「ベンチャー精神」と「落ち着き」を両立する会社

ーーSkillnote社の現在の組織規模を教えてください。

今で社員数50名ほどですが、明日3名増え、明後日も3名増える、と組織規模は日々拡大している状況です。

ーーメンバーにはどのような方が多いのでしょうか?

基本的には「5 CORE VALUES」に則って採用をしており、それらの項目に当てはまる人が多いです。

Skillnote社の5 CORE VALUES

とくに「すべてのことに、誠実に対応しよう」を満たす、話しやすく、チームメンバーとしての連携を取りやすい人が多いです。スタートアップ特有のイケイケな雰囲気というよりは、情熱を内に秘め、落ち着いて目の前の業務と向き合う人が多い印象です。「誠実さ」と「成長意欲」の素養が合わさった結果生まれた、Skillnote社特有の雰囲気だと思います。

ーー採用の段階で、具体的にはどこを見て「誠実さ」を判断するのでしょうか?

言葉にするのは難しいですね。今あらためて振り返ってみると、話し始めて数分で相手が誠実であるかどうかは判断している気がします。迷ったときは、具体的なクライアントの顔を思い浮かべて「○○さんとの打ち合わせを任せられそうかどうか」と考え、イメージがつくかどうかで決めることもあります。

ーーコミュニケーションが取りやすい環境づくりとして、バーチャルオフィスの導入やチーム合宿の開催など、さまざまな取り組みをおこなっています。チームワークの醸成も大事にしているのでしょうか?

おっしゃる通りです。「5 CORE VALUES」のうちの1つである、「全員プロダクトオーナー」にも通ずる考え方で、全員がサービスづくりに主体的に取り組めるよう、組織開発系の取り組みをいろいろと試しています。数年前、初めて社員数が10名を超えるタイミングで新しい部署をつくると、若干セクショナリズムっぽく考えるメンバーが出てきたことがきっかけでした。

WeWorkへの入居を決めたのも、チームワーク醸成の一環です。リモートワークを主体にすれば、全社員が入れるオフィスを用意する必要はありません。ただ、質の高いプロダクトを開発するには、すべてのメンバーが主体性を持って協力し合うことが重要で、集まれるための場所を確保したいという思いがありました。

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

プロダクトのブラッシュアップと世界展開を、同時に進める

ーー今後の展望を教えてください。

大きくは2つです。

1つ目は、ビジョンの実現に向けて、プロダクトをさらにブラッシュアップさせることです。

ありがたいことに導入企業はどんどん増えていますが、「つくる人が、いきる世界へ」の観点から見ればまだまだだと感じています。たとえば個々人のモチベーションを上げるための仕組みの実装も、力を入れたいことの1つです。製造業に携わる人が自分の目標を明確に設定でき、その達成に必要なスキルが一目でわかれば、毎日成長を実感しながら仕事ができるようになるはずです。

製造業の現場では、どうしても同じ作業の繰り返しに陥りがちで閉塞感をもつ人も少なくありません。若手の離職が多い傾向もあります。今よりさらにモチベーション高く業務に取り組める人が増えれば、そのような状況を変えられると思うのです。

2つ目は、日本発のプロダクトSkillnoteを世界No.1シェアにすることです。

日本が開発したソフトウェアのうち、世界トップシェアを獲得しているビジネス系のアプリケーションはほとんどありません。世界に対して日本のプレゼンスを高めるためにも、我々から世界中で使われるプロダクトを生み出したいと考えています。

本格的に海外展開を始めたのは2023年からですが、提携しているSAPからの紹介でグローバル展開するメーカーと打ち合わせをする機会が増えているところです。また、日系企業の海外工場でも続々とSkillnoteが導入されてきています。そのおかげで、海外での影響力は増しており、現段階(2024年3月時点)では日本以外に7ケ国の企業から導入されている状況です。

導入企業とのやりとりで手応えをつかみながら、さらにスピードを上げて導入企業を世界中に増やしていければと考えています。直近だと、アメリカかドイツへの進出に力を入れる予定です。

ーー入社後のキャリアパスについても教えてください。

これからどんどん事業拡大を進める予定ですので、それに伴って必然的に責任あるポジションを任せる人も増える予定です。たとえば、グローバル展開に伴って海外拠点の責任者的なポジションはどんどん増えるでしょう。

事業開発においても、私自身がいまだに責任者を務めている状況であり、権限委譲を進めたいと考えていますので、CMO的なポジションにも空きがあります。他にも、子会社社長やジョイントベンチャー社長など、これからの事業展開次第で、新しいポジションもどんどん増える予定です。

職種に関係なく、入社後にしっかり実績を出してもらえたメンバーは、どんどん要職に就いてほしいと考えています。自分のキャリアを高めたいと考えている人は、ぜひSkillnote社で挑戦をしてほしいです。

株式会社Skillnote 代表取締役:山川 隆史氏

株式会社Skillnoteの求人情報

募集職種 事業開発
業務内容 ・SAP・富士通などの業務提携先とのリレーションシップの構築

・アライアンス

・アカウントプランニング

・事業企画

・エンタープライズ営業

求める人物像 ・自身で課題を発見/設定し、能動的に行動できる方

・発見した問題を最後まで解決しきる、オーナーシップの高い方

・データだけで判断せず一次情報を取りにいける、フットワークの軽い方

・目標達成の意欲が高く、結果にこだわれる方

 

募集職種 プロダクト導入コンサルタント
業務内容 ・スキルマネジメントシステム「Skillnote」の導入支援
求める人物像 ・コンサルティング経験があり、クライアント対応やプロジェクトマネジメントの経験がある

・自身で課題を発見/設定し、能動的に行動できる方

・発見した問題を最後まで解決しきる、オーナーシップの高い方

・データだけで判断せず一次情報を取りにいける、フットワークの軽い方

・目標達成の意欲が高く、結果にこだわれる方

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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取材/執筆/撮影:種石光

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