「個」の才能発現を重視するプライム急成長AIベンチャーで、HRBPが挑む“仕組み化”と“未来への布石”【株式会社PKSHA Technology 白尾瑞希 氏】

リクルートで人事と事業の両方を経験し、ラクスでより戦略的な組織構築を実現するHRBP機能を立ち上げた白尾氏。彼女が次なるステージに選んだのはAIを主軸に急成長を遂げるAIベンチャー、PKSHA Technologyです。

プライム上場企業でありながら「個」の才能発現を追求し、変革を続けるPKSHAで白尾氏はいかにして「仕組み化」を進め、事業の未来を支える人事基盤を構築しようとしているのか。その圧倒的な経験と挑戦の軌跡を追うとともに、HRBPにとって必要な資質とは何かを探ります。

【Profile】

株式会社PKSHA Technology
AI Knowledge & Communicationカンパニー 
HRBPグループ マネージャー
白尾瑞希 氏

慶応義塾大学SFCを卒業後、新卒として株式会社リクルートに入社。本人は営業希望だったが人事部に配属され、新卒採用、キャリア支援、人材開発の領域でキャリアをスタートさせる。その後、グローバル人事を経て、自ら志願してホットペッパービューティーの事業部に異動。事業サイドの経験を積む。2022年より株式会社ラクスにてHRBP機能の立ち上げに従事。さまざまなプロジェクトで成果を上げ、2025年4月よりPKSHA Technologyにジョイン。現在に至る。

目次

“事業の視点を持つ人事”ができるまで

――まずはこれまでのキャリアについて詳しく教えていただけますか?

白尾:高校時代に弓道部でインターハイに出場できたことと、JICAのエッセイコンテストで入賞したことをきっかけに海外支援活動に触れたこと。この2つの経験がいまにつながるキャリアの原体験となります。前者では自分の頑張りが成果に直結する醍醐味を、後者では自分の見聞を広げるという面白さを身を持って知りました。

大学では中国でNPOを立ち上げて、お互いの国の企業と人材をマッチングさせるといった活動に注力していました。そのうちどんどん自分には渉外のような仕事が向いているなと自覚し、就活は商社やメーカーを中心に回るようになったのですが…当時はまだまだ大きな組織では女性活躍の機会が限られてしまう、という風潮がありました。

――リクルートをキャリアの第一歩に選ばれた背景は?

白尾:就活中に「どうやらリクルートは営業が強いらしい」という噂を耳にして(笑)。最初はどんな事業を展開しているかもよくわかっていなかったのですが、とりあえず受けてみたんです。すると面接の時点で早くも他の会社とは一線を画していました。どこでもいの一番に質問される志望動機を一切聞いてこなかったんです。その代わり選考中は「あなたはどういう人なのか」を徹底的に深堀りされることに。このカルチャーに強く惹かれました。

入社当初は営業を希望したのですが、意外にも配属先は人事部門。まさかの採用業務でキャリアをスタートすることになります。入社して3日目ぐらいから面接を任されるという、ある意味リクルートらしい洗礼を受けました。

その後、新設されたキャリアビュー社員の採用プロジェクトに配属されるのですが、あらかじめ3年がかりで基盤をつくったら解散、というゴールが決められた部署でもありました。ここではゼロからビジネスの基盤を作り上げるというスタートアップマインドを身につけました。

――その後にグローバル人事に異動となりますが、これはご自身から手をあげて?

白尾:たまたまチャンスが回ってきたんですが、そういえば私、海外にも興味があったなと(笑)。とても運がいいと思い、飛びつきました。グローバル展開はリクルートでもはじめての取り組みだったので、ひとつ人事としてやりきってみようと意欲的に挑戦しました。

ここではM&Aあり、拠点設立のための制度設計あり、海外人材育成もあればエグゼクティブの報酬設計もあるという…採用以外の全ての人事を少人数で回す、まさにいい意味でのカオスな状況を経験できました。

何が自分の役割かを決めずに「落ちそうなボールは全て拾う」という圧倒的当事者意識と、わからなくても本を読み、先輩に聞きまくるという超高速の学習能力が鍛えられました。これは現職のPKSHAのように複雑で変化の激しい環境では必須ともいえる「自分の領域から自ら染み出す」マインドのベースになっています。

――それでもなお、まだ足りないキャリアに貪欲に手を出していかれます。

白尾:事業経験がないというコンプレックスから『HOT PEPPER Beauty』の事業部門へ異動しました。ここでは営業企画的な役割を担い、40万行のエクセルと向き合うことで苦手だった数字に対する耐性をつけ、定量的な分析スキルを身に着けました。この経験を通じてリクルートの主役である事業の仕組みや推進力を深く理解できました。“事業の視点を持った人事”という、自身のキャリアにおける強力なコンピテンシーを確立できたのもこの時です。人事と事業双方を深く理解するスキルセットは、ここから先のHRBPとしての挑戦に不可欠なものでした。

「個」を信じる経営と「組織」を重んじる経営

――前職であるラクスでのHRBP機能立ち上げについて、特に印象に残っているエピソードをお聞かせください。

白尾:人事と事業の双方を経験し、自分の強みを理解できたことで「学んだことをゼロイチで試したい」という思いからラクスにジョインしました。ちょうど事業組織の中でHRBP機能を立ち上げるタイミングにマネージャーとして参画できたことはまたもや幸運でした。

当時のラクスは事業拡大に伴い、かなりの人数を採用しており、経営陣の中では新入社員の育成が目先の課題とされていました。しかし私はこれまでの経験と事業サイドの視点から「顕在化した課題だけでなく、未来の潜在的な課題に手を打つこと」ができてこそ、HRBPとして価値発揮ができると思っていました。

そこで行ったのが緻密な人員計画シミュレーションの導入です。当時のラクスの人員計画は「売上目標から逆算して、この人数を採用しよう」というシンプルなものでした。そこで私は各グレードの退職率、昇格率、採用状況などをパラメーターとして反映させたシミュレーションを実施したんです。

――事業数字だけでなく、人材が育つ時間軸まで踏み込んでの予測ですね。

白尾:すると「このまま新人を入れ続けると昇格が追いつかず、数年後にはマネージャーが大幅に不足する」という未来が炙り出されました。当時マネージャー1人あたりのメンバー数が、このままでは1.5~2倍近くになる可能性があるとの結果が得られたのです。これはさすがに組織運営上、リスクが大きすぎます。

この「課長が不足していく」という未来への提言は、当時の経営層にとっても新たな発見と気づきになってくれたようです。売上計画は維持する前提で「生産性を上げて採用人数を抑えるか、マネジメントを増やすための戦略的な育成計画を立てるか」という議論を経営と行い、それに基づいて事業の管理職を巻き込み、施策設計・実行を推進しました。

HRBPとして要望されたことだけをやるのではなく、人事の専門性と事業の視点をもって事業の未来に優先的に取り組むべきことを設計する。さらに責任を持って運用を回す。これらの役割を果たし切れたことは私にとっても大きな成功体験であり、HRBPとしての自信を得られたエポックメイキングな出来事でした。

――リクルート時代に培った緻密なシミュレーションが活かされたわけですね。

白尾:リクルートで学んだ「個」の力を信じる経営と、ラクスで学んだ「組織」の規律を重んじる経営。どちらもすばらしいのですが、この両極を身を持って経験できたことが私のキャリアにおける最大の資産といっても過言ではありません。

伸びしろがあることの可能性と面白さ

――大きな成功体験があったにも関わらず、ラクスからの転職を決めた動機はどんなものだったのでしょうか。

白尾:ラクスで組織の未来を予見した戦略が成功したことで、HRBPとしてやっていけるという自信がつきました。そこであらためて自分自身と向き合ったとき「個」と「組織」という視点での“私の好み”を再認識したのです。

さきほどもお話しましたが、リクルートは「個」にフォーカスして会社を成長させていこうとするカルチャー。一方でラクスは「組織」に焦点をあてて会社を成長させる文化です。その双方を経験した上で振り返ってみると、やはり個人の才能の発現でグロースする組織の方が、グローバル人事時代に培った「自分の役割や領域を染み出して結果を出す」という私のスタイルに合っていると感じました。それが直接の転職の動機となります。

――なるほど、その上で今回PKSHAを選ばれた理由を教えていただけますか?

白尾:PKSHAへの入社を決めた理由はまさしく「個」にフォーカスしたカルチャーと同時に、成長フェーズの組織であることの両方を満たしていたことです。

PKSHAは創業当初より個を大事にし、個の才能発現を重視しています。個人が管掌範囲を広げていくことを良しとする空気に包まれていると感じました。またプライム上場企業でありながら、まだスタートアップ感も残っており、これからメガベンチャーへと進化する急成長フェーズにあることも大きな魅力です。

複数の事業統合を経て、いい意味で仕上がり切っていない状況だからこそ可能性に満ちています。大規模組織での仕組み作りを経験した私にとって影響度が高く、変えられるものがたくさんある環境だと感じました。加えてAI業界という変化の著しい中で多数のプロダクトを持ち、この規模でポートフォリオ経営を確立しているというユニークな側面も有しています。PKSHAだからこそ、まだ日本でモデルケースの多くない「この会社ならではのHRBPのあり方」を模索し、実現できると確信したのです。

――現在のPKSHAでの業務内容と、どんなところに手応えを感じていますか?

白尾:現在は人事本部と事業組織の双方に籍を置き、事業側でHRBPグループのマネージャーを務めています。入社直後の10月に大規模な事業統合があり、現在まさに社内PMIとして風土の異なる組織のカルチャーや仕組みの融合に深く携わっています。業務内容は多岐にわたりますが、特にマネジメント体制の強化と戦略的な採用へのドライブが最注力事項です。

手応えを感じるのはさきほどもお伝えした通り、まさに「仕上がり切っていない」状況、つまり影響度の高さです。想像以上に仕組み化に向けての伸びしろがあり、ほぼスクラッチで人事基盤を作っていける。決してどこの会社でも得られるわけではない、稀有であり大きなやりがいを感じています。なぜならPKSHAはもともと前例踏襲の意識が薄く、より良いものにしていこうというマインドが強い組織だから。HRBPの経験者として、また実践者として「将来的にこんなことが起こる」という予測を基に、先手を打った施策を推進しやすい環境なんです。

PKSHAならではのHRBPの確立と社外への発信

――今回の転職活動において、Professional Studioを利用した感想をお聞かせください。

白尾:多くのエージェントと面談しましたが、Professional Studioさんは単に求人を紹介するのではなく「自身のキャリアとして、どういう経験をアドオンしていくとより市場価値が高まるのか」という視点で、マーケットのマクロとミクロの両方からお話をしてくださいました。

単に会社紹介をするというよりも中期的なキャリア形成に向けて一緒に考えてくださるスタンスが、まさにプロフェッショナルだと感じた点です。またご紹介いただいた各社についても解像度の高い情報をお持ちだったため、心から信頼して転職活動を進めることができました。

Professional Studio市川:白尾さんは、私がお会いしてきた人事の方々の中でも、How(手段)にとらわれず、会社や事業の成長に貢献したいという意識が非常に高い方だと感じました。また、リクルートでのグローバル人事や急拡大期のラクス社におけるハードでカオスな環境でも逃げずにミッションを完遂され、事業・人事の双方で高い貢献を発揮されてきました。

そんな白尾さんにとってPKSHAは、プライム企業でありながら組織はまだ発展途上で、これまでの2社でのケーススタディが活かせる場面が多く、「間違いなく貢献できる」と感じました。一方で、これまでの2社とは異なる“テクノロジードリブン”な企業である点において、白尾さんにとっても歯ごたえのある挑戦機会になると考え、ご紹介させていただきました。
「貢献できるベース」をフルに活かしつつ、「新たな挑戦」へと成長カーブを描ける最適な転職先だと確信していたため、先ほどのようなお言葉をいただけて私たちも大変うれしく感じています。

――今後のキャリアビジョンについて、PKSHAをどんな組織にしていきたいとお考えですか?

白尾:強い個人が集まっていて、なおかつ事業の勢いもある一方で、これから仕組み化を進めていくべき部分を上手くフォローしたいと考えています。さらに今後も拡大していく事業と組織を支えつつ、柔軟性にも対応できる強い人事基盤を持った組織にするという目標も掲げています。これは、個が最高のパフォーマンスを発揮できる「足腰」を作ることに他なりません。

――「個」を活かしつつ「仕組み」を入れる。難易度の高いミッションですね。

白尾:おっしゃる通りです。しかしそこが最大のやりがいでもあります。幸いPKSHAは前例にとらわれずドラスティックな提案を受け入れる柔軟性を持った組織です。HRBPとしてこれ以上ない恵まれた環境ですから、挑戦しない手はありません。

そしていずれはPKSHAならではのHRBPのあり方を確立させ、社外に向けて発信していきたいと思っています。PKSHAの事業が世の中に大きな影響を与えるには、その裏方である人事基盤が健全でなければなりません。優秀な「個」の才能を最大限に生かす人事の仕組みがPKSHAの事業発展を支えるのであれば、そのメソッドを広く社会へ価値提供していくことには大きな意義があるのではないか。そしてこういった取り組みが結果として、日本企業全体の活性化につながるのではないかと信じているのです。


白尾氏のキャリアは自身の「コンプレックス」と「好奇心」を原動力に、カオスな環境に飛び込み、事業と人事を横断する超ハイブリッドなスキルセットを築き上げた成長ストーリーそのものです。リクルートでの「個」にフォーカスした圧倒的な当事者意識、ラクスでの「組織の未来を予見するデータドリブンな戦略策定スキル」は、PKSHAで新たな進化を遂げるはず。

PKSHAはプライム上場企業でありながら、日本を代表するAIメガベンチャーを目指し、なお大きな成長曲線を描き続けているからこそ、白尾氏のような人材が「自らの型」を創り、組織の進化を根底からドライブできる舞台です。白尾氏がPKSHAで創り上げる「強い人事基盤」は、日本のHRBPの新しいモデルケースとなるでしょう。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

『Startup Frontier』を運営するProfessional Studioは、スタートアップに特化したキャリア支援を行っています。エージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

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