ゆるく楽しくから一転。しんどくても、自分の価値を発揮できる喜びを求めて【ファンファーレ株式会社:幸喜 安代氏】

ファンファーレ株式会社 人事 幸喜安代氏

スタートアップに特化したキャリア支援を行っているProfessional Studio株式会社が、スタートアップで働くリアルを伝えるメディア『Startup Frontier』。よく目にするポジティブな面ばかりでなく、苦しみや葛藤など、スタートアップキャリアを歩むうえでのハードシングスについても隠さずにお伝えします。

今回は、廃棄物回収の配車計画を自動作成するSaaS「配車頭(ハイシャガシラ)」の開発運営を手がけるファンファーレ株式会社の人事、幸喜 安代(Yasuyo Koki)氏のスタートアップキャリアを紐解きます。

【Profile】

ファンファーレ株式会社 人事 幸喜安代氏

新卒から経理・総務を複数経験した後、2018年にビジネスチャットツールを提供する「Chatwork」に経理として入社。2019年に人事に社内転職し、人事組織立ち上げに携わる。2019年に上場後、年間100名の採用などを経験し、2023年3月に廃棄物回収の配車計画を自動作成するSaaS「配車頭(ハイシャガシラ)」の開発運営を手がけるファンファーレ株式会社に、1人目人事としてジョイン。

ファンファーレ株式会社 人事 幸喜安代氏モチベーショングラフ

目次

できないことばかりで、自分の介在価値に疑問を抱くように

ーーまずは、現在の業務内容について教えてください。

1人目の人事として、人事業務全般を担当しています。加えて、バックオフィス系の業務まで幅広く担当させてもらっています。

ーー幸喜さんは33歳のとき、Chatworkへ入社されています。なぜ、スタートアップの世界に飛び込んだのでしょうか?

きっかけは離婚です。

それまでは、どちらかと言えばゆるく楽しく働くタイプで、仕事や金銭的なモチベーションは強くありませんでした。しかし離婚後は「どうすれば仕事で成果を出してお金を稼げるのか」という思考にガラッと変わりました。

ただ、当時の自分にはそもそもお金を稼ぐためのスキルも経験もありませんでした。どうすれば経理として市場価値が上がるのか考え、思いついたのは、IPOに携わることでした。そこでIPOが狙える企業を探し、ご縁があったChatworkへ入社をしたのです。

ーー実際に入社されて、いかがでしたか?

最初はとにかくツラかったです。

業界に関する知識がないばかりかIT企業自体がはじめてで、そもそも用語すらわかりませんでした。同僚が普通に使いこなせるツールには触ったこともなかったですね。

また、会社から求められているマインドも全然違いました。これまでは、言われたことをやっていればよかったのですが、Chatworkではやるべきことを自分で考えたり、新しい仕組みをつくったりすることを求められました。経験したことのない業務ばかりで自分の実力不足を痛感することが多かったです。

なによりツラかったのは「自分がこの会社に提供できる価値がない」という感覚でした。周りの同僚たちとスピード感が合わず、うまく仕事ができない。にも関わらず、会社は売り上げを上げ続けているわけで、自分の存在意義を見失っていたのです。滅多に泣かないのに、仕事でツラすぎて泣いたこともありました。

ファンファーレ株式会社 人事 幸喜安代氏

経理から人事へ異動し、少しずつ結果が出るように

ーーどのようにして乗り越えたのでしょうか?

翌年に人事へ配属され、そこから徐々にポジティブに働けるようになりました。

もともと、友人の転職活動を手伝うくらい採用支援自体は好きでした。未経験の仕事でしたが、当時入社した人事専任の方と、上司の2人と一緒に人事のチームを立ち上げ、まずは手探りで採用活動を始めました。

試行錯誤を重ねるなかで少しずつ内定承諾が取れたり、会社の認知度を高められたり、成功体験が増えると仕事に喜びを感じるようになりました。会社からも評価されるようになり、採用だけでなく表彰制度の新設といったインナーコミュニケーションも任されるようになっていきました。

ーー結果が出るようになったのはなぜなのでしょうか?

一緒に採用業務を担当してくれた役員、チームメンバーの方のおかげです。

とくに役員には最初はとにかく怒られました。会社が事業拡大を目指して人員を拡充するフェーズだったこともあり、役員の方から求められるスピードは非常に早くプレッシャーも大きかったです。それでも、なんとかついていくうちにどんどん成長し、気がつくと結果が出るようになっていました。

ーープレッシャーを感じながらも、踏ん張れたのはなぜだったのでしょうか?

答えになっていないかもしれませんが、「頑張る」と決めていたからです。

Chatworkに入社する前から、これまでゆるく働いていたツケで大変な思いをすることはわかっていました。それでも、ここで踏ん張らなければ自立なんてできません。形はどうであれ絶対に自分からは辞めない、やり遂げるまで続けると決めていました。

また、少しずつでも結果が出始めたことが大きかったです。どれほど肉体的精神的にツラくても、自分の存在意義が感じられないときよりは楽でしたね。

余談ですが、退職のタイミングで送別会を開いてもらい、お世話になった役員の方とも食事をさせてもらいました。そのとき一緒に働いた役員の方から「最初は採用担当を変えてもらおうと思った」と言われました。私が人事としての基本的な作法も分かっておらず、仕事が全然できなかったからです。それでも、「食らいついてよく頑張ってくれたね」と言ってもらえ、うれしかったです。彼から学べたことはとても大きな財産になりました。

ファンファーレ株式会社 人事 幸喜安代氏

もっと、学んだことを還元できる環境を求めて

ーー入社から5年目、37歳のときに2社目のベンチャーへと転職を決めています。きっかけは何だったのでしょうか?

私に求められる役割が変わったことです。

人事として迎えた2年目、他社で経験を積んだスペシャリストもメンバーに加わりました。そのあたりから、これまでの取り組みが実を結び、Chatworkというブランドが認知され、多くの求職者にご応募いただけるようになりました。

チームとして順調な一方、個人的にはどこか物足りなさを感じるようになりました。以前のように幅広い業務を1人でこなす必要はなく、蓄積したノウハウを引き継ぐ、育成のような役割がメインになったのです。これまで幅広く学ばせてもらったことをもっと還元できる環境で働きたいと思うようになりました。

最終的には、人事組織も採用拡大し、年間採用人数も100名を超え、ある程度やり切ったと思い、ゆるく転職活動を始めることにしたのです。

ーーファンファーレに入社した経緯を教えてください。

そもそも、転職先はスタートアップを前提で考えていました。これまでの経験を活かすなら、まだ仕組みも組織も整っていない場所が良いと思ったのです。たとえ大変でも、自分が関わることで会社が良くなる感覚を味わえる場所が良く、大変なことも楽しいことも、仲間と分かち合えるスタートアップが良いと思っていました。

とくに急いではいなかったので、ひとまず転職サイトに登録し、知り合いのエージェントに話を聞くことから始めました。そのタイミングで転職サイトを通じてご連絡いただいたのがProfessional Studioのエージェントの大庭さんでした。

採用担当としてこれまで多くのエージェントと関わってきましたが、大庭さんには非常に丁寧に対応いただけたと感じています。とくに私の場合は会社選びの軸が定まっておらず、まずはそこから相談させてもらいました。

ミーティングで私が興味のありそうな数社について説明をしてもらい、気になるところはないか聞いてくれました。そこでの会話をもとに、私のこれまでの経歴や仕事に対する考え方を掘り下げてもらい、スタートアップのなかでもアーリー期に近い企業が良いのではという話になりました。改めて会社を選定してもらい、ご紹介いただけたうちの1社がファンファーレでした。

正直最初の印象は「何をやっているのかよくわからない会社」でした。コーポレートページも見ましたが、私には産廃業界に関する知見がまったくなく、解決しようとしている課題が何なのかピンときませんでした。それでも大庭さんから「きっと幸喜さんに合うと思いますよ」と言われ、そこまで言うならと一度面談を組んでもらうことにしたのです。

代表の近藤と実際に話し、彼の経歴に興味を持ちました。美大出身のUXデザイナーで新規事業創出、組織開発など幅広い経験を積んでいて、とくに人事領域の経験がある経営者は珍しいなと感じました。「こういう人たちとつくる組織って、どんな組織なんだろう」と興味が深まったことを覚えています。

ファンファーレ株式会社 代表 近藤 ゆきと氏

ファンファーレ株式会社 代表 近藤 ゆきと氏

また、選考を通す中で事業や組織についての理解も深まり、魅力的に思えるようになりました。ニッチな領域だからこそ参入企業が少なく、市場を独占できる可能性があります。ファンファーレのビジネスモデルなら、業界最大手になれるのではと可能性を感じました。

最後の最後で背中を押してくれたのは、前職の方々でした。食事に行ったとき、ファンファーレの話をすると「センスいいね」と言ってくれて、「目をつけてた企業だ、とても良いと思うよ」と言ってくれる人もいました。ダメだったらいつでも戻っておいでとも言われて、思い切って挑戦してみようと決断ができました。

ーーもともと「経理として箔をつける」「自立できるくらいお金を稼ぐ」と思っていらっしゃったかと思います。ファンファーレへの転職では気にしなかったのでしょうか。

気にしなかったです。

Chatwork時代、経理として価値を出せず大きな挫折感を味わいました。それが、人事に配属されてからは、いろいろな人との出会いを経て成長し、結果が出せるようになりました。その過程でだんだんと、お金を稼ぐことだけがすべてではないと思うようになったのです。もちろんお金は大事ですが、自分にとってはそれ以上に「自分の経験を還元できる」「会社から求められている」という感覚のほうが重要だと気がつきました。

ファンファーレ株式会社 人事 幸喜安代氏

入社8ヶ月で採用難易度の高い3名を獲得。人事のプロフェッショナルとして即戦力へ

ーーファンファーレ代表の近藤さんに伺います。幸喜さんの、入社8ヶ月の活躍について教えてください。

近藤:大活躍で、会社として非常に助かっています。わかりやすい成果としては、採用難易度の高い3名の方々の採用が決まったことです。

1人目はコーポレート業務担当のマネージャー候補の方です。前職では20名から150名へのグロースを経験していて、ファンファーレでも同じような拡大フェーズを支えてほしいと思っています。

2人目はマーケティングに知見があり、前職ではPMMをされていた方です。事業開発やセールス部門の体制構築をお任せしたいと思っています。

3人目はさらにハイレイヤーでCXO候補の方です。大企業を含めた数社で経験を積み、取締役といった経営レイヤーまでの経験があります。さらに直近でお勤めだったのが産廃業界の会社でした。まさに、今のフェーズで欲しい人材です。

また、エージェントさんとの関係性づくりでも活躍いただいています。

これまでずっと採用代行サービスを利用してきましたが、それではファンファーレに知見や関係値が溜まっていかないという課題感がありました。幸喜さんに入社いただいたことで、会社として直接採用エージェントとコミュニケーションが取れるようになり、産廃業界の魅力を採用候補者の方に伝えやすくなりました。

また、会社の状況が毎日のように変わり、獲得したい人材像も頻繁に変わりますが、幸喜さんには常に細かい変化もキャッチアップしていただき採用の現場に反映してもらっています。今まさに必要な人材を獲得しやすい状況にできていると思います。

ーー最後に、今後の展望について教えてください。

幸喜:とにかく今は、組織として足りない部分を補うため、できることはなんでもやりたいと思っています。その先のビジョンは、実は考えていません。ファンファーレの事業がうまく行けばそれで良くて、役職へのこだわりもないです。

どうなりたいか、と聞かれるといつも困るのですが、代表の近藤からは私のキャリアについて「川下り型」だねと言われます。ゴールを見据えて動く「山登り型」と比べて、私の場合は大きな流れに身を任せながら、出会った課題を解決して期待に応えてきたパターンです。やりたいことがないことに、勝手に苦しんでいた時期もありますが、今は「川下り型」「山登り型」のどちらがいい悪いではない、と思えるようになりました。

これからも、目の前の会社の成長にコミットし続けます。ゆるく楽しく働いていた20代の頃からすると、考えられない場所に来てしまいましたが、あの頃と比べると成長できたのかなと思います。自立への不安も今はありません。これまで培ってきた自信を胸に、過信せずチャレンジを続けていければと思います。

右:ファンファーレ株式会社 人事 幸喜 安代氏、左:担当エージェントのProfessional Studio株式会社 大庭 崇史

右:ファンファーレ株式会社 人事 幸喜 安代氏、左:担当エージェントのProfessional Studio株式会社 大庭 崇史

『Startup Frontier』を運営するProfessional Studioは、スタートアップに特化したキャリア支援を行っています。エージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

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取材/執筆/撮影:種石光

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