美容師としてキャリアをスタートさせ、その後Web広告業界へ転身。10年にわたりセールスの最前線で実績を積み上げてきた藤田佳未氏。彼女が次の舞台に選んだのは日本のスタートアップシーンを牽引する急成長企業、LayerXでした。しかしそこに至るまでの道は決して平坦ではなく、選択の迷い、スタートアップ特有の壁、そして入社後も真のアンラーニングを迫られる深い挫折がありました。藤田氏のこれまでの軌跡を辿りつつ、LayerXの組織の魅力、彼女らしいキャリアビジョンなどに迫ります。
【Profile】
株式会社LayerX
セールス
藤田 佳未 氏
美容師として3年ほどサロンで活躍したのち、Web広告系スタートアップに入社。営業職としてのキャリアをスタートさせる。その後、大手Web広告グループにて広告主と代理店に向けてDSP、アドネットワーク、SNS広告などのセールスを担当。途中、美容系スタートアップへの転職・出戻りを挟みつつも同グループで10年近い経験を積む。2025年4月、全くの異業種である株式会社LayerXにジョイン。バックオフィス向けAIエージェントサービス「バクラク」シリーズのセールスとして活躍中である。

美容師から広告営業へ。タフな環境で培ったビジネスの基礎体力

まず最初に、藤田さんのファーストキャリアについて教えてください。
もともとは美容師でした。専門学校を卒業してサロンに入り、スタイリストとして勤めていました。美容の仕事はやりがいはあったものの、とにかく体力勝負の世界です。また、確かに手に職はつくのですが、待遇面や長期的なキャリア形成においてどうしても不安が拭えませんでした。ふと「この生活を10年続けた先にどんな未来があるのだろう…」と迷うことも。結局、3年ほどでリタイアすることにしました。 次の仕事はどうやって見つけたのですか。
まずは名前の通った転職サイトに登録し、未経験からでも挑戦できる職種をかたっぱしから探しはじめました。店舗での対面接客は避けたかったけど、オフィスワークの経験はゼロです。と、なると伸びている業界に絞らないと拾ってもらえないのでは、と自分なりに考えました。調べてみるとどうやらWeb業界が急成長しているらしい。そこで社員50名ほどのWeb広告関連のスタートアップに飛び込んだのが、セールスとしてのキャリアのスタートです。 きちんと戦略を立てて転職されたのですね。
その後、入社して1年も経たないうちに会社がVOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)へグループインすることになりまして。企業規模が大きくなったことで、手に入れられる経験値も成長機会もスタートアップとは比べ物にならないほど広がったんです。
最初は営業事務での入社でしたが、すぐに営業の最前線に異動となり、ひたすらテレアポを繰り返す日々。時には飛び込み営業も辞さない環境は刺激的かつスキルを磨くのに最適でした。今から10年ほど前のWeb広告業界ですから、市場の勢いもすごかったですね。 具体的にはどんな営業でしたか。
中小規模の広告代理店や直接の広告主となる中小企業がメインの担当でした。リスティング広告やSEO対策などデジタルマーケティング全般のソリューションを愚直に提案する毎日です。そうした現場で結果的に身についたのは泥臭く成果を追求する姿勢。これに尽きます。

なにしろ全くの未経験でのスタート。パソコンを使う仕事もビジネスのお作法も何もかもはじめてで壁にぶつかってばかり。負けず嫌いじゃなかったら挫けていたかもしれません(笑)。さらにCARTA HOLDINGSの一員となってからは社内ベンチャーの立ち上げメンバーとして異動する機会があったのですが、この時も大きな成長実感を得られました。
その後、一度別の企業へ転職を経験されていますね。
美容サロン向けの電子カルテシステムを展開している企業へ転職しました。スタイリストとしての経験にWeb広告のスキルが加わったので、自分の原点ともいえる美容業界に関わるビジネスに挑戦したかったんです。
ただ、結論からいうとこの転職は上手くいきませんでした。カルチャーやビジネスモデルなどさまざまな要因が重なり、思うような成果が出せなかったんです。結局、1年ほどで古巣であるCARTA HOLDINGSへ出戻りをさせていただく形になりました。 いまでいうアルムナイですね。戻ってからはどのようなミッションを担ったのですか。
今度は広告主側ではなく、メディア側に向き合う営業組織に配属されました。メディアを運営している企業に対して、当社の広告枠やソリューションを導入してもらうための営業です。Professional Studio代表の市川さんが在籍していたRetty株式会社など、いわゆる有力メディアに対して熱心にアプローチを続けていました。 広告主側とメディア側、両方の営業を経験されて気づいた違いはありますか。
面白さの質が全く異なる点ですね。広告主側の営業は「この成果を出すので予算をください」という提案です。それに対してメディア側の営業は「当社の仕組みを導入すれば御社のメディアをこれだけ儲けさせることができます」という提案になります。お客さまに試していただきやすい一方で、成果が出なければすぐに他社へ切り替えられてしまう。SaaSのような継続契約とも異なり、いつでもやめられてしまう緊張感がありました。
両方を経験できたことで営業としての視野が大きく広がりました。結果的にメディア営業を5〜6年経験し、広告主側営業の期間と合わせて10年ほどを広告業界で過ごしました。
想定外の挫折から再挑戦へ。復帰を支えた伴走とブレないカルチャー

その後、メタバースのスタートアップへ転職されます。この経緯について教えてください。
CARTA時代の先輩が在籍していたことが決め手でした。実はこの転職活動のタイミングでProfessional Studioの市川さんと出会い、LayerXの紹介も受けていたのです。同じタイミングで選考が進む中、LayerXからは内定もいただいたのですが、悩んだ末にメタバースの会社への入社を決めました。 メタバースのスタートアップを選んだ理由は。
そもそも当時の転職動機のひとつに「会社の看板に頼らず、自分の実力を試したい」という思いがありました。前職での社歴が長くなるにつれ、成果が個人の実力なのか会社の看板によるものなのか、わからなくなっていたからです。だからこそ環境をガラリと変えて、自分がいないと困るようなアーリーフェーズに近い企業に身を置きたいと考えていました。
その点、当時のLayerXはすでに社員数300名ほどの規模。スタートアップの中では、完成された組織のように映ってしまいました。「LayerXは私が介在しなくても伸びるだろう。ならば、よりチャレンジングなステージへ行くべきだ」――そう判断したのですが、入社後にある変化が起きました。 何が起きたのですか。
メタバースを取り巻く市場環境が激変してしまったのです。その影響で、会社としては開発組織やコーポレート部門の再編も進めながら、とにかく営業活動を強化していく方針になりました。
メタバースという商材の性質上、アポイント獲得からかなり難易度が高い営業でした。イベントに足を運んで名刺交換をし、少しでも興味を持ってくれた担当者にアプローチする。さらに限られた予算からどう捻出してもらうかに腐心する。このあたりの難しさは完全に想定の範囲を超えていました。私の見込みも甘かったと思います。

精神的にも肉体的にも限界を感じて、入社数カ月後には市川さんにメッセージを送りました。「スタートアップへの転職とはここまで過酷なものなのでしょうか」と、悶々とした気持ちをそのままぶつけたのを鮮明に覚えています。 そこから、再びLayerXへの道が繋がるのですね。
内定を辞退して別の会社へ行った人間が、わずか半年で「やっぱり入社したい」と言ってもいいものか……という気持ちもありました。しかし市川さんは私のそのプライドや気まずさをすべて察してくださった上で「もう一度LayerXの方々とフラットに話をしてみませんか」とスムーズに場をセッティングしてくれたのです。 2度目の選考プロセスはどのように進んだのですか。
複数回のカジュアル面談を行ってもらいました。1回目も面談はしていたのですが、2回目では「今度こそお互いのギャップがないように」とかなり細かな価値観まですり合わせる場を用意してくれたんです。
結果として4~5回ほどの相互理解のための話し合いを通じて、入社後のミスマッチを完全に無くすことができました。おかげで入社への意志や覚悟が固まりましたし、あれだけの時間と機会を用意してくれたLayerXの採用チームには感謝しかありません。 最終的な入社の決め手は何だったのでしょうか。
ずばり「人」ですね。面談の中で異なる部署のさまざまな社員の方々に「なぜこの会社にいるのか」「LayerXの何が良いのか」と同じ質問をぶつけました。すると驚いたことに全員から全くブレのない、同じ答えが返ってきたのです。
自分たちが提供しているプロダクトへの自信、そして行動指針である「徳」や「TrustfulTeam」などの浸透、より具体的な行動指標を言語化した「羅針盤」への深い共感。それまでの環境では味わったことのない、一本筋の通ったカルチャーに魅了されました。
挫折から掴んだ、アンラーニングの重要性とバクラクセールスの醍醐味

入社後、「バクラク」の営業において最初にぶつかった壁は何でしたか。
入社して直面したのは、これまでの10年間で築き上げた「Web広告営業の成功体験」をすべて捨てる、真のアンラーニングの苦しみでした。当時はその成功体験こそが自分の足を引っ張っているとは気づかなかったのです。
広告営業の多くは、すでにある商品や手法を提案する「パッケージ型の営業スタイル」です。しかしバックオフィスの業務を自動化する「バクラク」の営業はお客さまの課題にあわせて運用のあり方まで変えていく「伴走型のソリューション提案」。私の中に染みついた“売り切る営業”のスタイルは通用しませんでした。
それを痛感させられたのが、入社半年後に起きた大型案件の失注です。その時にプライドは完全に打ち砕かれ、自分の営業スタイルを根本から変えなければここでは生き残れないと痛感しました。 その失注から何を学びましたか。
失注の理由を徹底的に振り返った際、自分がお客さまの「表面的な言葉」しか聞いていなかったことに気づかされました。顧客が本当に困っている本質的な課題にまで踏み込めておらず、プロフェッショナルとしての提案ができていなかったのです。
「バクラク」のセールス組織は、失敗に対して非常にシビアかつ丁寧に振り返りを行います。周囲から耳の痛いフィードバックを数多くもらい、自分の営業スタイルを根本から変えなければいけないと猛省しました。過去のプライドをすべて捨て去り、本当の意味でのアンラーニングができたのは、間違いなくこの失注の経験があったからです。 成果に対して非常にストイックな組織なのですね。
はい。そこは非常に良い意味でのギャップでした。入社前は経営陣が腕利きのエンジニアで最先端のテクノロジーを扱っていることから、もっとスマートで洗練された会社だろうと思っていました。
しかし、実際の現場は驚くほど泥臭い面もあります。目標達成に向けて、マネジメント層や部長陣が現場の1案件まで一緒に頭を悩ませながら改善策を探ることも少なくありません。お客さまの課題を、われわれのプロダクトで何としても解決していきたいーー。バクラクを信じてくれたお客さまへのコミットメントこそが、LayerXの本当の強さなのだと日々実感しています。 一方で働きやすさの側面はいかがですか。
制度面ではリモートワークやフレックスタイム制が機能しており、自由度高く働くことができます。私のように小さな子どもが2人いるような社員にとって、この柔軟性は本当にありがたい仕組みです。そして何より無駄な作業が徹底的に排除され、お客さまと向き合う時間に集中できる環境が、働きやすさの源泉にあると思います。

具体的に、どのような無駄が排除されているのでしょうか。
気合いや根性論で作業量を増やすのではなく、仕組みで課題解決する思想が浸透しているんです。たとえば営業活動における議事録の作成や顧客データの入力など、これまで手作業で行っていた事務は社内のAIツールやシステムによってほとんど自動化されています。おかげで入社してから純粋な営業活動以外の作業時間が劇的に減っている実感があります。
お客さまと対話し、価値提供する時間に集中できることこそがLayerXが実践する“未来の営業のカタチ”だと感じています。 『バクラク』というプロダクトそのものを営業する面白さについて教えてください。
会社の本質的な課題、特にバックオフィスの崩壊や人手不足という深刻な痛みを直接解決できる手触り感があります。私自身、前職でいちユーザーとして『バクラク』を利用していた経験があるため、経費精算の手間が省ける喜びを誰よりも理解しています。お客さまから「業務が本当に楽になった」「残業が減った」というお声を直接いただけるのは、無形商材の広告を売っていた時代にはない感動があります。 顧客企業のバックオフィスが社内で表彰されるような事例もあるとお聞きしました。
そうなんです。『バクラク』を導入して全社的な業務効率化を達成した結果、その会社の管理部門が社内MVPを受賞したというエピソードをお聞きした時は、鳥肌が立つほど嬉しかったです。通常、バックオフィスのシステム刷新だけで社内表彰されることは稀だと思うのですが、それほど企業の経営基盤をドラスティックに変えるインパクトを届けられているのだと、誇りを持って営業をしています。 開発チームとの連携や、プロダクトが進化するスピード感についてはいかがですか。
驚異的なスピードです。現場でお客さまからいただいた要望や欠けている機能を開発チームにフィードバックすると、1ヶ月後には実際のプロダクトとして実装され、リリースされることもあります。従来の開発と営業が分断されている組織にありがちな「営業が欲しいものがいつまでも作られない」というストレスが一切ありません。
それどころか、営業もお客さますらも気づいていなかった「そうそう、これが欲しかった」という洗練された新機能が、開発側から突如としてリリースされることも日常茶飯事です。このスピード感があるからこそ、営業現場としても常に新鮮なワクワク感を持ってお客さまに提案を届けることができます。
任された場所で期待以上の成果を出し、まだ見ぬ景色をチームと共に

現在、藤田さんはプレイヤーからマネージャーへと役割が変わっています。視点の変化はありましたか。
かつての私は「とにかく早く出世したい」「自分の実力を証明したい」というエゴが強いタイプでした。しかしLayerXに入社し、圧倒的に優秀で利他的な仲間たちと働く中で、その価値観が良い意味で崩壊しました。
いまは「この素晴らしいメンバーたちが最もポジティブに、かつストイックに成果を追える最高のチームを作りたい」という思いが原動力になっています。優秀な人たちに囲まれているからこそ、視座が個人の幸福から組織の幸福へと自然にシフトしていったのだと感じています。 ここでProfessional Studioの市川さんに伺います。藤田さんに再挑戦を促した理由は?
市川: 広告業界がCookie規制などの転換期を迎える中、このまま留まるとキャリアの選択肢が狭まるリスクを感じていたからです。藤田さんにとって、異業種へ挑戦するならまさに「いましかない」タイミングでした。
――次の舞台として、なぜLayerXだったのでしょうか。
市川: AIによるバックオフィスDXは「不可避の巨大なうねり」になると確信していたからです。その市場にテクノロジーを全賭けしているLayerXであれば、藤田さんの営業力は何倍もの価値を持つはずだと確信していました。
またLayerXの経営陣の特徴として、福島さんや松本さんをはじめメディア業界出身者が中心となって立ち上げられた組織であるという点が挙げられます。彼ら自身もSaaSの専門家ではなく、自ら学びながら現在のプロダクトを創り上げてきた背景があります。だからこそ藤田さんのような「異業種人材」に対する受容度や理解の土壌が、他の企業に比べて圧倒的に高いだろうという見立てがありました。
家庭の時間を大切にしながらもアグレッシブにキャリアを伸ばしたいという藤田さんのニーズに対して組織カルチャー、市場の成長性、そして受け入れ態勢のすべてのパズルが綺麗にハマる案件だと確信していたからこそ、2度目の提案も一切の躊躇なく行うことができました。

市川さんから見て、現在の藤田さんの活躍はどのように映っていますか。
市川:まさに期待通り、それ以上の存在感を発揮されているなと感じます。藤田さんが持つ独自のエネルギーや、美容師・広告営業で培ってきた腕一本で生き抜くタフさは、LayerXの泥臭いカルチャーと最高の化学反応を起こすと思っていました。実際にマネージャーに昇格され、組織の中心として活躍されている姿を見るのは、エージェント冥利に尽きます。 藤田さんにお伺いします。あらためて振り返って、Professional Studioの支援はいかがでしたか。
他の転職エージェントと決定的に違っていたのは、私の「テキスト化されていない本音」をどこまでも察してくれた点です。多くのエージェントは条件面の羅列や、企業の良い部分にのみフォーカスして紹介しがちですよね。しかし市川さんは私が当時抱えていた子ども2人の育児と仕事の両立への不安、過去のキャリアに対するプライドや焦りをすべて汲み取ってくれた。
その上でスプレッドシートやドキュメントを使い、各企業のメリットだけでなく「この環境だと、ここが懸念になるかもしれない」というリスクまで正直に提示してくれました。
何より、一度内定を辞退した私の気まずさを完全に包み込み、LayerXとの対話を再開してくれた配慮にはいまでも感謝しかありません。市川さんがいなければ、現在の私のキャリアは間違いなく存在していません。 最後に、藤田さんのこれからの展望やキャリアビジョンについて教えてください。
実は今後の具体的なキャリアパスを、あえて細かく定めていません。私が入社してからだけでもLayerXの組織規模は2倍近くに拡大(※取材時点)しており、社内で挑戦できるフィールドや可能性は文字通り無限に広がっています。
これまでの私は「次は部長、次は役員」と縦のキャリアばかりを意識しがちでした。しかし、この会社には信頼に足る優秀な経営陣やマネジメント層が揃っています。だからこそ自分の狭い視野だけで将来を規定するのではなく、会社の成長スピードに合わせて、自分の可能性を信頼できる組織に「委ねてみる」のも面白い選択肢だと考えているんです。
任された場所で期待以上の成果を出し続け、チームと共にまだ見ぬ景色を見に行く。そのプロセス自体を、これからも全力で楽しみたいと思っています。
Web広告業界で10年におよぶ確固たるキャリアを築いた藤田氏。彼女がLayerXで見つけたのは過去の成功体験をアンラーニングし、「すべての経済活動を、デジタル化する。」という壮大なミッションに自らの可能性を委ねていく、エキサイティングな挑戦の場でした。
優秀な人材は会社の看板や目先の条件だけでなく、自らの実力を極限まで試せる“未知のフェーズ”と、泥臭くも圧倒的に利他的な“仲間”を求めているもの。
Professional Studioでは藤田氏のような挑戦者が持つ「テキスト化されていない本音」を解像度高く理解し、企業のカルチャーと深く結びつけることで、単なるマッチングを超えた「事業成長の核」となる採用を創出していきます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
『Startup Frontier』を運営するProfessional Studioは、スタートアップに特化したキャリア支援を行っています。エージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

