スタートアップやベンチャーへの転職が、近年はより一般的な選択肢として浸透してきていると感じる方も多いのではないでしょうか。
がむしゃらに働いてみたい、裁量権の大きい仕事に挑戦したい、実力で評価されたい、スピード感のある成長をしていきたい、などの考えを持っている方にとってスタートアップへの転職は向いているかもしれません。
しかし大手企業を離れてスタートアップで働くことのデメリットや、企業の実態が不透明で見えてこないことが不安で、なかなか1歩を踏み出せていない方も多いのではないでしょうか。
この記事ではおもに20代に向けて、スタートアップに転職するメリット・デメリットや転職の進め方などについて、大手企業との違いを踏まえつつ解説していきます。
20代はスタートアップに転職しやすい?
そもそもスタートアップとは
スタートアップとは、創業から間もない企業のうち、新しい技術を活用したり斬新なサービスやビジネスモデルを打ち出したりすることで、短期間での事業拡大を目指す企業のことを指します。
ベンチャーもまた創業から間もない企業を指すことが多いですが、あえて区別するなら、スタートアップのほうがよりイノベーションに重きを置いていることや、より短期間で事業をEXIT(新規株式公開、M&Aなど)をさせることを意識しているという点が違いとして挙げられます。
まだまだ日本全国の企業数に占めるスタートアップの割合は低いものの、近年は企業数も投資額も増え始めてきました。
日本政府もスタートアップやベンチャーの創出が経済成長の鍵を握るとして、多くの支援施策を用意している状況です。
20代はスタートアップに転職しやすい?
以下の点から見れば20代はスタートアップに転職しやすいと言えるでしょう。
- 実績やキャリアよりも成長性や意欲が重視されやすい
- スタートアップのメンバーは年齢層が低いことが多い
- 前職の給与との差が比較的大きくなりにくい
スタートアップでは柔軟な思考力や課題解決能力、モチベーションなどが重視される傾向があります。
短期的に事業を拡大していくためには、既存の業務内容やビジネスモデルに縛られず、新しい方法にチャレンジしていくことが往々にして求められるためです。
株式上場やM&Aを本格的に目指すフェーズでは、より実績重視のキャリア採用を中心にすることもありますが、成長過程にあるスタートアップの場合はポテンシャル採用をおこなうことも多いため、採用ニーズがマッチすれば未経験でも転職しやすいでしょう。
またスタートアップのメンバーは年齢層が低いケースが多く、平均年齢が20代後半の企業も見られます。年齢層が自分と近いことで、転職後に馴染みやすい場合が多いでしょう。
スタートアップやベンチャーに転職すると給与面が心配な方も多いかもしれませんが、給与水準が上がってきていることもあり、前職との差がほぼないケースも。
ただし外資系企業などですでにミドル~ハイクラスまで昇進していた場合などは給与が下がってしまう可能性もあるので、自分が求める要件を確認しながら転職を進めましょう。
スタートアップに向いている20代の特徴
以下はスタートアップに向いている20代のおもな特徴です。
- 幅広い業務に携わり成長したい人
- 当事者意識と実行力を兼ね備えた人
- 将来的に起業や独立をしたい人
- 事業の安定性よりも新規性に惹かれる人
- つねに変化するカオスな状況を楽しめる人
- 既存の枠にとらわれない柔軟な思考ができる人
- 課題解決から逆算して考えられる人
ざっくりまとめると「キャリアゴールに向けてスキルを身に着けたい人」「スタートアップならではの環境を楽しめる人」「やり方にとらわれず柔軟な思考で課題を解決できる人」などが当てはまります。
たとえば将来的に起業や独立を考えている場合、裁量権の大きいスタートアップで様々な業務内容に触れることは、専門スキルだけでなく経営やコーポレート業務に関する知識・経験が得られるよい機会になるでしょう。
スタートアップの環境は短期間で変化するため、それを楽しめるかどうかも大事なポイントです。たとえば数週間~1ヶ月の間に事業目標が大きく方向転換するようなことも起こり得ます。
そんなカオスな環境で成果を出すには、つねに課題に焦点を当て、柔軟なやり方や思考を用いて対処していくことが大切です。このような働き方に惹かれる方であればスタートアップに向いていると言えるでしょう。
20代でスタートアップに転職するメリット・魅力
20代でスタートアップに転職するおもなメリットは以下のとおりです。
- 年齢に縛られず裁量権をもって働くことができる
- スキルアップ・実績作りにつなげることができる
- 経営陣の動きや考え方を間近で見ることができる
- 成果を出すことが昇進・昇給につながりやすい
- ストックオプションを付与される可能性がある
これらのメリットについて、大手企業との違いも踏まえつつ解説していきます。
年齢に縛られず裁量権をもって働くことができる
大手企業ではマネージャーなどの管理職ポジションが空きづらく、実績や経験を積んでも昇格するまでに比較的長い年数がかかることがよくあります。
スタートアップでは年齢に縛られず、実績や成果に応じて大きな裁量権を与えられやすいのが特徴です。20代であっても経営陣や役員として抜擢される可能性も十分にあります。
「20代は下積み」という考え方もありますが、若いうちから責任をもって重要な意思決定をしていく経験ができるのは、スタートアップならではのメリットと言えるでしょう。
将来的に起業や独立を考えているのであればなおさら、上流工程や経営レベルの意思決定にかかわる経験をたくさん積んでおくに越したことはありません。
スキルアップ・実績作りにつなげることができる
スタートアップでは20代であっても大きな裁量権をもって働くことが多いので、スキルアップや実績作りにつなげることができるのもメリットです。
とくに創業間もないスタートアップであれば、0→1(ゼロイチ)フェーズでプロダクトやサービスの立ち上げに関わることになります。
EXITを控えたフェーズであれば、上場やM&Aにむけてさらなる事業拡大を成功させることができれば大きな実績になるでしょう。
20代のうちに中核メンバーとして事業の立ち上げや上場を成功させることができれば、そのなかで得られるスキルや実績は、今後のキャリアにおいても貴重な財産となります。
経営陣の動きや考え方を間近で見ることができる
とくに将来的に起業や独立をしたい方にとって大きなメリットとなるのが、経営陣の動きや考え方を間近で見ることができることです。
少人数のスタートアップでは必然的に経営陣との距離感が近くなり、場合によっては経営会議に参加したり、業務を一緒に進めたりすることもあるでしょう。
経営陣と同じ視座に立ってプロダクトやサービスについて議論することで、たとえばキャッシュフロー(収支)やROI(投資利益率)などのような、経営に必要な視点を養いながら事業を推進することにつながります。
起業や独立を考えていない方にとっても、経営視点を踏まえた戦略・戦術を立てる経験を20代のうちから経験することで、ハイレイヤーのビジネススキルを養うことができるでしょう。
成果を出すことが昇進・昇給につながりやすい
スタートアップでは年功序列のような考え方よりも、実力主義・成果主義の企業が多いのが特徴です。そのため大手企業と比較すると、成果を出すことが昇進や昇給につながりやすいのがメリットと言えます。
大手企業の場合は「実力で評価されたいけれど機会に恵まれない」「十分に評価されているけれどポジションに飽きがない」などの要因でなかなか思うようなキャリアを描けていない方も多いのではないでしょうか。
スタートアップの場合は少人数組織となることが多いため、どちらかといえばつねに人材ニーズがある状態です。20代であってもマネージャーポジションや経営メンバー、役員として活躍する機会も比較的訪れやすいでしょう。
ストックオプションを付与される可能性がある
スタートアップでは、役員や社員に対してストックオプションが与えられるケースが多いです。
ストックオプションとは「自社株購入権」のこと。企業が上場したあとに、所定の金額で自社株を購入することができます。
株価が上昇したときにストックオプションで得た株券を売却すれば、大きな利益(キャピタルゲイン)を得られる可能性があるのです。
上場するまでの道のりは険しいですが、それを乗り越えていくためのひとつのモチベーションになるかもしれません。
20代でスタートアップに転職するデメリット・注意点
20代でスタートアップに転職するおもなデメリットは以下のとおりです。
- 基本的にハードワーク
- スキルアップや実績作りになるかどうかは自分次第
- 組織体制や福利厚生が整ってないことが多い
- 年収が下がる可能性がある
- 倒産や事業撤退のリスクがある
これらのデメリットについて詳しく解説します。
基本的にハードワーク
スタートアップでは基本的にハードワークとなることが多いです。
1人あたりの裁量権が大きかったり、様々な視点やスキルを養う機会に恵まれたりする反面、業務範囲も広がりやすくなります。業務範囲が広いことで必然的に仕事量が増えてしまいがちです。
二者択一ではないものの、よりプライベートに重きを置いて20代の期間を過ごしたい方にとってはストレスとなってしまうかもしれません。
ただし、たとえばIPO(株式上場)に向けて労務監査が行われているフェーズでは、労働基準法が遵守されているか厳しくチェックされるため、組織体制がある程度整っているスタートアップではそこまでハードワークにならないケースもあります。
スキルアップや実績作りになるかどうかは自分次第
大手企業にも同じことは言えますが、スタートアップに転職したあとでスキルアップや実績作りにつなげられるかどうかは自分次第です。
有名企業に入社したからといっていきなりスーパープレイヤーになるわけではないように、スタートアップに転職すること自体よりも、スタートアップで何をやるのかが重要です。
専門知識について勤務時間外に学習したり、がむしゃらに試行錯誤してみたり、手も頭もとにかく動かすことが必要になるタイミングもあるでしょう。
20代のうちに様々な経験をできるのはメリットですが、その環境を活かすためには、キャリアゴールを見据えて努力することが欠かせません。
組織体制や福利厚生が整ってないことが多い
スタートアップでは組織体制や福利厚生が整ってないことが多いです。
組織体制が整っていない場合、採用や育成の段階から組織づくりをしていくことが求められる可能性もあります。研修制度やマニュアルがない場合は、自分で手探りしながら作成していくこともしばしば。
良くも悪くも業務範囲が広くなりがちなので、専門スキルだけを磨きたいという方にとってはデメリットと言えるでしょう。
またスタートアップでは昇給や昇進がしやすいというメリットがありますが、福利厚生については大手企業と比べると充実していないことがあります。
しかし事業が拡大していくと、大手企業にはないユニークな福利厚生を用意している企業もあるので、転職を決める前に確認しておくとよいでしょう。
年収が下がる可能性がある
近年はスタートアップの給与水準も上がってきていますが、とくに外資系などの大手企業と比べると年収が下がってしまう可能性があります。
事業が軌道に乗りはじめたら昇給やボーナスが得られたり、仮に株式上場することができれば大きな利益が得られたりする可能性もありますが、現状の給与との差は事前に確認しておくとよいでしょう。
現時点で給与をたくさん得たいのか、それとも幅広いスキルやスタートアップでのやりがいなどを最重要視するのか、自分が求めることをあらためて整理しておくのも大切です。
倒産や事業撤退のリスクがある
スタートアップには倒産や事業撤退のリスクがあります。
とくにプロダクトやサービスをリリースする前であれば、本当にPMF(プロダクト・マーケット・フィット)させられるか、想定以上の利益が得られるか、といった点は不透明です。
業績不振が続けば、倒産や事業撤退は免れたとしても、減給や組織縮小にともなう解雇などもあり得ます。
そのため転職したい企業については、キャッシュフローや市場の将来性、経営陣の経歴などを確認して、経営判断やプロダクトに信頼を置けるかどうかを検討しておくのが大切です。
20代でスタートアップに転職する流れとチェックポイント
20代でスタートアップに転職するにあたって知っておきたいポイントや採用までの流れを紹介します。
- キャリアビジョン・キャリアプランを明確にしておく
- 自分に合った事業フェーズを確認する
- 転職エージェントや転職サイトで企業を探す
- スタートアップの採用フローは?
- 最終的な転職の決め手は?
上記の点について詳しく解説するので、実際に転職を進める際にはぜひ参考にしてみてください。
キャリアビジョン・キャリアプランを明確にしておく
スタートアップへの転職を検討するときに大事なのが、キャリアプランやキャリアビジョンを明確にしておくことです。
一般的にキャリアビジョンは「自分なりたいと思う将来的な理想像や目標」、そしてキャリアプランは「キャリアビジョンを実現するための具体的な計画」のことを指します。
そもそもスタートアップに転職するときには「なぜスタートアップである必要があるのか」という問いかけがついて回ります。きっと自分のなかになにか挑戦したいことや理想像があるはずなので、自問自答してみましょう。
- 3年後、5年後、10年後はどのような働き方をしているか
- キャリアビジョン・キャリアプランと現状との差はどこにあると考えているか
- 上記の差を埋めるために今やるべきこと、見つけるべきスキル・経験は何か
たとえば上記のようなことから明確にしておくとよいかもしれません。
「Will・Can・Must」と言われるフレームワークで、やりたいこと・理想像(Will)、今できること・強み(Can)、今やるべきこと・身につけたいこと(Must)を明確にする方法です。
20代以降のキャリアまで見据えて転職活動をすることで、より具体的に自己アピールすることにつながり、企業とのマッチ度も明確になります。
自分に合った事業フェーズを確認する
スタートアップを探しはじめる段階で確認しておきたいのが事業フェーズについてです。
ひとくちにスタートアップと言っても、事業がどの段階にあるかによって組織体制や働き方などが大きく異なります。
キャリアビジョン・キャリアプランから考えたときに、自分がどのフェーズの企業で働きたいと思っているか、という点についてなるべく明確にしておきましょう。
シード期 |
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アーリー期 |
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ミドル期 |
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レイター期 |
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基本的にハードワークとなりやすいのがシード期・アーリー期です。赤字状態での運営もざらなので、プロダクト・サービスのリリース、収益化、組織の基盤づくりなどに向けてとにかく手を動かしていく必要があります。
創業メンバーとして事業の中核を担いたい方や、より経営者に近い目線、0→1(ゼロイチ)フェーズで働きたい方はシード期・アーリー期のスタートアップが合っているかもしれません。
ある程度の安定性が出てくるのがミドル期以降です。EXITが見えてくると組織体制や待遇面も整ってきます。各部署ごとに専門的なスキルが求められはじめるので、プロダクトやビジネスモデルに惹かれるスタートアップで専門分野のスキルアップを目指したい人に合っているかもしれません。
また上場までのフェーズを体験してみたい方にとっても、ミドル期・レイター期のフェーズにある企業に参画することで学びが得られるでしょう。
転職エージェントや転職サイトで企業を探す
実際にスタートアップへの転職を進めるときには、転職エージェントや転職サイトで企業を探すのが一般的です。
スタートアップへの転職では、公開されている情報が限られていることから、企業の実態が見えにくいことがネックになりやすいので注意しましょう。
転職サイトを利用する場合、自分で情報をキャッチアップしていくことが大切です。市場の将来性や経営メンバーの経歴、企業キャッシュフロー、インタビュー記事などの情報を活用して多角的な目線で自分に合う企業を探してみましょう。
これまでスタートアップで働いた経験がない20代の方におすすめなのが、スタートアップ特化の転職エージェントを利用することです。
スタートアップ特化の転職エージェントは、VC(ベンチャーキャピタル)や起業家と築いた独自の情報網を駆使して、自分にマッチする企業を提案してくれます。
非公開の求人情報を抱えていることも多く、自分では探しにくいシード期やアーリー期の企業を紹介してもらえることも。20代という大切な時期の転職を支えてくれる、心強い味方になってくれます。
スタートアップの中途採用フローは?
スタートアップの中途採用フローは企業によってまちまちですが、一般的には大手企業とそこまで大きく変わりません。
- カジュアル面談
- 書類選考
- 面接(3~5回程度)
- 内定受諾
基本的にこのようなフローで進んでいきますが、企業によっては実技試験や体験入社、ランチ会などを実施することも。
もちろん企業側目線ではニーズに合致する人材なのかを判断する機会となりますが、候補者側も「自分にマッチするか」「キャリアビジョン・キャリアプランを実現できそうか」という目線で話を深掘りしていくことが大切です。
最終的な転職の決め手は?
スタートアップへの転職で最終的に決め手となりやすいのは以下のポイントです。
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への共感
- 事業やビジネスモデルが魅力的に感じる
- 社内カルチャーとのマッチ度が高い
スタートアップでは事業を短期間で急成長させていくために、1人1人が本気でコミットすることが求められます。
ともすると事業撤退や倒産というリスクもあるので、企業側も候補者側も、「お互いに熱意をもって同じ方向を向き、一緒に事業を成功へ導けるか」が大切なのです。
事業やビジネスモデルへの共感はもちろん、企業が掲げるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や社内カルチャーに共感できるかどうかを、採用フローをとおして深掘りしていきましょう。
『Startup Frontier』を運営するProfessional Studioは、スタートアップに特化したキャリア支援を行っています。エージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。